行政書士が教える

契約書作成のポイント

□ 契約書の構成は、一般的に次のようになっています。 ①表題 ②前文(当事者の表示、契約の主たる目的等) ③本文(契約条項;債権債務の内容)④後文(作成通数の記載等)⑤作成年月日 ⑥当事者の署名捺印(又は記名押印)

 

□ 契約事項については、「契約自由の原則」により、自由に定めることができるとされています。

 ただし、法律の強行規定に反する事項、公の秩序又は善良な風俗に反する事項(社会通念に反することや犯罪になるようなことを内容とする契約事項)は無効とされています。

 

 

□ 契約に定めがない事項は、民法が適用されますが、民法に任意規定があっても、トラブル防止のため、契約に盛り込むべき契約条項があります


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士・渡邉文雄

 

似顔絵

1. 契約書の構成

Step1 表題

 

 契約書のタイトルです。「〇〇契約書」など、契約書の内容がひと目でわかるよう、簡潔に表現します。 

 

step2 前文

 

 前文では、①契約当事者の名称(法人の場合、商号のみを記載する) ②略称を用いることの記載 ③契約の目的・要旨を記載するのが一般的です。 なお、契約締結の目的は本文の第1条として記載する場合もあります。また、人によって解釈が異なる恐れのある用語を使わざるを得ないときは、用語の意味を誤認されることが無いよう、定義条項を規定しておきます。

 

 

step3 本文 

 

□ 本文には、主要条件と一般条件を記載します。 

□ 条文の見出し「第〇条(〇〇〇〇)」は、条文の内容を分かりやすく簡潔に表現します。

 

□ 解釈の余地を残すような表現をしない。

・数量は副詞で表現しないで数字を書くようにしましょう。

・主語等を省略しない(多少冗長な文章になってもやむを得ない)

・代名詞はなるべく使わない。

 

 

◇ 契約書の文言について 

 

□ 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の使い方

 

■ 「A及びB」は、AとBの両方という意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B及びC」と記載します。

 

■ 「A又はB」は、AかBのどちらかという意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B又はC」と記載します。

 

■ 大きなグループと小さなグループに分ける場合(一次分類と二次分類をする場合)は、大きなグループ分けに(一次分類)に「並びに」、小さなグループ分けには(二次分類)「及び」を使います。

 例えば、「A及びBの引き渡し並びにCの受領」のように用います。

 

■ 「又は」「若しくは」についても、大きなグループ分けに(一次分類)「若しくは」、小さなグループ分けに(二次分類)に「又は」を使います。 例えば、「A又はBの引き渡し若しくはCの受領」のように用います。

 

□ 「推定する」と「みなす」

■ 「A円の損害があったものと推定する」と規定した場合に、実際の損害がB円と立証できた場合は、B円の損害が認定されます。

 

■ 「みなす」の場合は、実際の損害がいくらであろうと、A円の損害が認定されることとなります。  

 

 

(出典:淵邊善彦(2017)『契約書の見方・作り方』日本経済新聞出版社.46-50頁)

 

 

 ポイ ント 加除訂正の仕方

 

 訂正があるときは、訂正部分の余白に訂正の内容を付記して、各当事者の印を押します。金額の訂正はこの方法によらず、書き直すことをおすすめします。

 

□ 方法その1 

 

1. 訂正箇所に二重線を引きます( 黒く塗りつぶしたり、修正テープ等で塗りつぶすのはNGです)

2. 正しい文言を、横書きの場合その上部、縦書きの場合はその左横に書きます。

3. 当事者全員の訂正印を二重線の近くに押します(横書きの場合は正しい文言の右横、縦書きの場合は正しい文言の下部)  注意事 項  訂正印は、署名に用いたものを使います。

 

□ 方法その2 

 

1. 訂正箇所に二重線を引きます( 黒く塗りつぶしたり、修正テープ等で塗りつぶすのはNGです)

2. 正しい文言を、横書きの場合その上部、縦書きの場合はその左横に書きます。

3. 縦書きの場合は、訂正箇所の真上の欄外(横書きの場合は、訂正箇所の真左又は真右の欄外)に、「削除〇文字」「加入〇文字」と書き、当事者全員の訂正印を近くに押します  注意事 項  訂正印は、署名に用いたものを使います。

 

 

step4 主要条件

 

 主要条件とは、その契約書独自の条件です。

 

□ 目的物

□ 業務内容 

□ 対価

□ 支払い方法

□ 物品の売買契約では、納品方法、検査基準・検査方法、検査の結果の取り扱い、検査期間を検査条項として規定します。

□ 物品の売買契約では、クレーム対応について、どのケースのとき誰が対応するか、責任や費用の分担について規定します。 

 

 

step5 一般条件

 

 一般条件とは、どんな種類の契約書でも記載される条件です。 契約内容によって、一般条件の内容が異なる場合があります。

 

□ ①支払い条件、②契約期間、③契約解除、④期限の利益喪失、⑤不可抗力、⑥秘密保持義務、⑦損害賠償、⑧準拠法、⑨個人情報取り扱い などがあります。

 

■ 契約解除条項 民法に定める事由以外の事由による解除事由を認めたい場合は規定しておく必要があります。

 

■ 期限の利益喪失条項 民法に定める事由以外の事由による期限の利益喪失事由を認めたい場合は規定しておく必要があります。

 

■ 不可抗力条項 何をもって不可抗力というか、解釈が異なる恐れがある場合、具体的なものを列挙し規定します。

 

■ 危険負担 どのような場合に、誰が危険を負担するのかを規定します。

 

 

step6 後文

 

 契約が締結された旨、作成した契約書数、契約書を保有する者を記載します。

 

 

 step7 日付  

 

□ 契約書作成年月日

 契約を締結した日を記載します。契約の効力が発生する日となります。なお、遡って契約の効力を発生させたい場合は、有効期間に関する条項を設けます。

 

 

 step8  署名捺印(又は記名押印) 

 

□ 契約当事者の住所を記載し、署名捺印(又は記名押印)します。

 

□ 法人の場合、①商号(○○株式会社) ②代表資格(代表取締役社長) ③代表者の氏名 を書き、署名捺印(又は記名押印)します。

 

□ 代理人によって契約を締結する場合は、①本人の住所・氏名の記載とともに、②代理人の住所・肩書を記載し、代理人が署名捺印(又は記名押印)します。

 

※ 記名押印の場合は、実印を押印し、印鑑証明書添付の「委任状」を用意します。

 

 

step9 契約書の最後・割印

 

 契約書の最後に余白がある場合は、「「以下余白」と書きます。あるいは、最後の部分に当事者全員で「止め印」を押印します。 

 

 2通以上作ったときは、重ねて割印します。

 

2. 法律に規定があるものでも、法律の規定と異なる趣旨の契約条項したいときは、特約として契約に盛り込む必要があります(法律の規定と同じ趣旨の契約条項とするのであれば省略してかまわない)

 

① 契約の存続期間(調印したとき以外に契約をスタートさせるとき。継続的商取引、賃貸借)、履行の期限(一回限りの売買)

② 契約の解除・解約(解除・解約ができる事由。催告を要するかどうか)

③ 損害賠償(遅延利息、賠償額の予定。金銭貸借では年率、日歩)

④ 保証・連帯保証

⑤ 危険負担(不動産・動産の売買。契約解除、手付返還、代金減額)

⑥ 担保責任(売買契約。期間、責任の内容)

⑦ 租税等諸費用の負担

⑧ 期限の利益喪失(金銭貸借、継続的商取引)

⑨ 裁判管轄(相手方が遠隔地にいる場合)

⑩ 強制執行認諾約款付き公正証書(金銭債務)

 

3. 書いてはいけない契約条項

 

 契約事項については、「契約自由の原則」により、自由に定めることができるとされています。

 ただし、法律の強行規定に反する事項、公の秩序又は善良な風俗に反する事項(社会通念に反することや犯罪になるようなことを内容とする契約事項)は無効とされています。 

 

① 法律の強行規定に反する事項

 

※ 借地借家法の契約期間や契約更新等の規定は強行法規です。  

※ 金銭貸借での利息に関する利息制限法の規定は強行法規です。

 

② 公の秩序又は善良な風俗に反する事項(社会通念に反することや犯罪になるようなことを内容とする契約事項)

 

※ 自力執行条項を設けることは公序良俗違反で無効です。

※ 条件を付けることにより法律の強行規定や公序良俗に反する結果となるときは、条件を付けることはできません。

※ 刑事罰を受ける契約条項は公序良俗違反で無効です。  

 

 

4. その他、契約書を作成するときの注意点 

 

① あいまいな記載をしないで明確に書く

 

・ 支払時期を明確に書く。

・ 月払い、半年払い、年払いの区別を書く。

・ 「いつ」支払うかを書く。

・ 「著しく」「本格的に」など、はっきりしない語句を条件を定める文言に使わない。

 

② 勘違いで作成しトラブルを招かないよう注意する

 

・ 期間に関する表記は、翌日を数えはじめの日とする。(初日不算入の原則)

・ 月(年)月(年)単位で期間を定めるとき(例;令和元年5月2日から2月(年)間)は、最後の月(年)において、その起算日に応当する日の前日を末日とする。

・ 期間に関する表記は、末日が日曜日、祝祭日にあたるときは、その日に取引をしない慣習があるときは、翌日を末日とする。

 

5. 書面による契約

 

 次の場合は、「契約自由の原則」の例外として、要式性(書面による契約)が定められ、書面によらなければ無効です。 ①保証契約 ②農地の賃貸借契約(農業委員会に提出) ③建築工事請負契約 ④月賦販売契約、訪問販売、連鎖販売、特定継続的役務提供等の取引 ⑤借地借家法(存続期間を50年以上とする定期借地権設定契約、事業用定期借地権設定契約、更新の無い定期建物賃貸借契約) ⑥取り壊し予定建物の賃貸借契約

 

※ 事業用地借地権設定契約は公正証書によることが必要です。

 

※ 無償で、他人にものを贈与する約束は、口頭の場合はいつでも取り消すことができます。


ポイント 取り扱い業務