債権法(民法債権編)改正(2017.6.2公布、2020年4月1日施行)

(保証人の保護に関する改正)

1. 極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となった。  

2. 事業用の融資の保証人に個人がなる場合は、契約締結の1か月以内に、公正証書によって保証意思を表示することが義務付けられた。これがない契約は無効となった。 

3. 情報提供義務の新設

① 契約締結段階では、主たる債務者は、保証人に対し、「財産及び収支の状況」「主たる債務以外に負担している債務の有無及び履行状況」「主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとしているもの」の情報を提供しなければならないこととなとなった。

② 保証債務の履行前の段階では、主たる債務者は、保証人から請求があった場合は、 主たる債務の支払い状況について情報を提供しなければならないことととなった。

③ 債権者は、債務者が期限の利益を失ったときは、2か月以内に保証人に通知しなければならないことととなった。  

(その他の改正)

4. 新たに定型約款の規定が設けられた。

5. 法定利息を5%から3%に引き下げ、市中金利変動制を導入した。

6. 業種別の1年から3年の短期消滅時効を廃止し、消滅時効は原則5年に1本化した。

7. 意思能力を有しないでした法律行為は無効であることを明文化した。

8. 将来債権の譲渡(担保設定)が可能であることを明文化した。

9. 賃貸借終了時の敷金返還や原状回復に関するルールを明文化した 。  

10. 「錯誤」による意思表示の効果を「無効」から「取消し」に改めた。今後は「取消し」の主張期間の制限を受ける。

   

(以上参考文献:彩の国行政書士埼玉)    


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 保証人の保護に関する改正

 

(1)極度額の定めのない個人の根保証契約は無効とした

 

 改正前は貸金等根保証契約は極度額を定めないと無効とされていたが、改正後は、貸金以外でも極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となりました

 したがって、不動産賃貸借契約の個人保証なども極度額を定めないと無効となります

 これにより、個人の保証人は青天井で保証させられることはなくなります。なお、2020年4月1日以前に締結されたものは改正法は適用されません。 

 

(2)公証人による保証意思確認手続きの新設

 

 事業用融資について、経営者以外の保証人は公証人による保証意思確認手続きが必要となりました。

 つまり、事業用の融資の保証人に個人がなる場合は、契約締結の1か月以内に、公正証書によって保証意思を表示することが義務付けられ、これがない契約は無効になります。

 この規定はその事業に関与していない第三者を守るためのものなので、主たる債務者が法人で、その経営者(理事、取締役、執行役またはこれらに準ずるもの)が保証人になる場合には適用されません。また、主たる債務者が個人で、その配偶者、共同経営者などが保証人になる場合にも適用されません。

 

(3)保証人に対する情報提供義務の新設

 

 ① 主たる債務者の保証人に対する情報提供義務(資産・負債等)

 

 契約締結段階では、主たる債務者は、保証人に対し、「財産及び収支の状況」「主たる債務以外に負担している債務の有無及び履行状況」「主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとしているもの」の情報を提供しなければならないこととなりました。

 情報を提供しなかったり、虚偽の情報を提供したときは、保証人は保証契約を取り消すことができます。

 

② 主たる債務者の保証人に対する情報提供義務(主たる債務の支払い状況)

 

 保証債務の履行前の段階では、主たる債務者は、保証人から請求があった場合は、 主たる債務の支払い状況について情報を提供しなければならないこととなりました。

 

③ 債権者の保証人に対する通知義務(債務者が期限の利益を失ったとき)

 

 債権者は、債務者が期限の利益を失ったときは、2か月以内に保証人に通知しなければならないこととなりました。 

 これにより、個人の保証人が突然に保証債務の履行の請求を受けることを防ぐことができます。

 なお、この通知をしなかった場合は、遅延損害金は請求できません。

 

(以上参考文献:彩の国行政書士埼玉№.165 2019.10 5頁)  

 

 

2.  定型約款の規定の新設

 

(1)「約款の個別条項についても合意したものとみなす」規定が設けられた

 

 改正前は、約款による契約の問題点として、民法では、原則として、契約の内容を認識していなければ契約に拘束されないとされるが、約款による契約の場合は認識していないのが通常であり、どのような場合に約款の個別の条項が契約内容となるか不明瞭でした。 

 改正民法548条の2では、定型約款を契約内容とする旨の合意があり、かつ、その旨の表示があれば、相手方が約款(契約の内容)を認識していなくても、個別の条項に合意したものとみなす、としました。

 ただし、約款の内容が信義則に反し相手方の利益を一方的の害するもの(*)であれば、合意しても無効と明記しました。

 

* 別の商品も購入させる抱き合わせ販売条項など

 

* 改正民法548条の2第2項

 相手側の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型的取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則(*信義則)に反して相手方の利益を一方的に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意しなかったものとみなす。

 

 

(2) 約款の一方的変更の要件を整備した(一定の場合に、相手の合意なく約款の変更が可能になった)

 

 改正前は、約款による契約の問題点として、民法上、約款の変更には、原則として、個別に承諾を得ることが必要ですが、それをしないでした約款変更の有効性について議論がありました。

 改正民法548条の4では、①定型約款の変更が、相手の一般の利益に適合するとき、又は、②定型約款の変更が、契約した目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容、その他の変更に係る事情に照らして合理的なものである場合は変更後の定型的約款条項について合意があったものとみなす、としました。

 つまり、約款の変更は個別に同意を得ることなくできるが、相手方の利益になる場合又は合理的理由がある場合に限定されました。

 

(以上参考文献:彩の国行政書士埼玉№.166 2019.12 22-23頁)

 

 

3.  法定利率に関する見直し

 

(1)改正の概要

 

⓵ 民事法定利率は、改正前5%固定制から変動制(改正当初3年間は3%)になりました。

 

② 商事法令利率(6%)は廃止され、民事法定利率に統一されまし。

 

(2)損害賠償金算定において法定利率を適用する場合は以下の場合となりました

 

⓵ 利率を定めていない場合

② 利率の定めがない遅延損害金

③ 中間利息控除額の算定

 

(3)交通事故損害賠償額の変化

 

 改正前は約1億円の賠償が改正後は約1億2千万円となります。

 

□ 詳しくは、》法務省ホームページ をご覧ください

 

(以上参考文献:彩の国行政書士埼玉№.167 2020.2 13頁) 

 

 

4.  消滅時効に関する改正

 

(1) 基本的ルールの変更

 

 ① 改正前 

 債権は権利を行使することができる時(支払い期限到来時)から10年間行使しない場合に、時効で消滅する。

 例外的に、商事時効5年、職業別に短期の消滅時効(1~3年)あり。

 

 ② 改正後

 債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合に、時効で消滅する。

 また、債権は権利を行使することができる時(支払い期限到来時)から10年間行使しない場合に、時効で消滅する。

 

 ③ 変更点

 ア、商事時効5年、職業別に短期の消滅時効(1~3年)の特例を廃止

 イ、時効の主観的起算点の新設(債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合に、時効で消滅する)

 

 

(2) 不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間の見直し

 

 ① 改正前  

 不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者をを知った時から3年間行使しない場合は時効で消滅する。

 また、不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しない場合は時効で消滅する(解釈で除斥期間)。

 

 ② 改正後

 

 生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、損害および加害者をを知った時から5年間行使しない場合は時効で消滅する。

 また、生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しない場合は時効で消滅する。

(以上新設)

 

 ③ 変更点

ア、 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効が、損害および加害者をを知った時から3年→5年に変更された。

 

 イ、 不法行為に基づく債権全般について、20年間の時効期間が文字通り時効期間であると明示された。(従来は解釈で除斥期間)

 

(3) 時効の中断・停止の見直し

 

 ① 改正前  

 消滅時効の完成を阻害する事由を「停止」と「中断」で規定。

 

 ② 改正後

 消滅時効の完成を阻害する事由を「完成猶予」と「更新」に整理。

 

 ③ 変更点

 

  「停止」→「完成猶予」(時効が完成しない)と「中断」→「更新」(一部弁済(承認)時点でこれまでに進行した時効期間がゼロクリアされ、新たに時効が進行する)に変更された。 

 

ア、 一部弁済(承認)による時効の「更新」(時効の進行がゼロクリアされ承認の時から新たに時効が進行する)

 

(起算点)

|→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了)

|→・・・(一部弁済:新たに時効が進行)

       |→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了) 

 

イ、 訴え提起による時効の「完成猶予」(裁判中は時効の完成は猶予される。また、確定すれば新たに時効が進行する)

 

(起算点)

|→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了)

|→・・・(訴え提起:裁判中は時効の完成は猶予される)

      ///////(裁判確定:新たに時効が進行)

         |→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了)

 

ウ、 催告による時効の「完成猶予」(催告から6か月が経過するまで時効の完成が猶予される)

 

(起算点)

|→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了)

|→・・・(催告) 

      ///////(完成猶予:6か月が経過後、新たに時効が進行)

         |→・・・・・・・・・・・・(10年:時効期間満了) 

 

 

 (以上参考文献:彩の国行政書士埼玉№.168 2020.4 10-11頁)