共同親権

  令和6年5月17日民法改正(令和6年法律第33号) により、従来は、離婚後は一方のみが親権者となる「単独親権」が原則でしたが、改正により現行の単独親権に加え、離婚も家庭の事情に応じ、父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになります。  

  離婚後に親権者の変更を希望する場合、家庭裁判所への申し立てが必要となります。子どもの利益を最優先に考慮し、必要な証拠を提出することが求められます。

  養育費請求権に先取特権が付与され、法定養育費の額については法務省令で定めることとされました。これにより、養育費の支払いがより確実に行われることが期待されます。

  この法律は、一部の規定を除き、上記公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます。

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1.     民法(819条1項)改正により、「共同親権」が導入されます

 

(1)協議離婚の場合

  現在、離婚する際の親権は、父親、母親のどちらかの「単独親権」とされています(民法819条1項)が、改正により、「協議離婚」の際は、父母の協議により父母双方を親権者と指定する(「共同親権」)ことができるようになります(改正民法819条1項)。

 

(2)裁判離婚等の場合

  「裁判離婚」をする場合や「離婚することには合意しているが親権者について合意していないとき」は、裁判所が、子の利益を考慮したうえで、父母双方を親権者として定める(「共同親権」)ことができるようになります(改正民法819条2項、5項)。

 

(3)裁判所はどのような場合に「単独親権」とするのか

 

  父母双方を親権者とする(「共同親権」)ことが子の利益を害する場合には「単独親権」としなければならない(改正民法819条7項後段)。

 

《子の利益を害する場合とは》

 

①    父又は母が子の心身に害悪を及ぼす恐れがあるとき

  例:父親が子に「虐待」をする場合 

②    父親が母親に「DV」を行っていた場合

 

※ 虐待やDVは身体的なものに限りません。

 

①、②の事情がある場合には、共同親権にはなりません。

 

(4)父母とも共同親権に同意しない場合でも、裁判所が共同親権にする可能性があります

 

  子と同居している親と子との関係が良好でない場合は、別居している親が親権者として養育に関与することによって子の精神的な安定が図られることが期待できるときは、父母に同意がなくても、裁判所が共同親権にする可能性があります。

 

2.    改正民法では親権者がきまらなくても離婚届出が受理される

 

  改正民法では、DV等があったりして早期に離婚したい方の為、親権者が決まらなくても、親権者の指定を定める家事審判又は家事調停の申し立てがされれば、離婚届出が受理されることなります(765条1項2号)。

 

3. 単独親権であったものを共同親権にできるか

 

  家庭裁判所に単独の親権から共同親権にへの変更の申請をすることができます(改正民法819条6項)。

 

4. 共同親権でも同居している親が単独行使できるものがあります

 

  共同親権となっても、子が緊急手術を受ける際の親の同意など、急迫の事情があるとき(改正民法824条の2第1項3号)や、子の食事や服装、通常のワクチン接種、習い事など、監護及び教育に関する日常の行為(改正民法824条の2第2項)は、子と同居している親が単独ですることができます。

 

5. 養育費請求権に先取特権が付与された

 

  養育費請求権に先取特権が付与され(改正民法306条3号、308条の2)、公正証書で債務名義を作成しなくても、私文書の合意書があれば差し押さえができるようになります。これにより、養育費の支払いがより確実に行われることが期待されます。

 

6. 法定養育費を法務省令で定める

 

  法定養育費の額については法務省令で定めることとされました。

 

7. 財産分与の請求期限を離婚のときから5年以内に改めた

 

  財産分与は、現行法では離婚のときから2年以内に請求しなければならないとされていますが、改正民法では、これを離婚のときから5年以内に請求期限を改めました(改正民法768条)。

 

(本稿の出典 ・日本行政書士会連合会『月刊日本行政(2025.5)  №.630』45頁-46頁.)