正しい遺言文の書き方~遺言文を書くときに、特に注意すべきこと~

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 要式、形式面での禁止規範を遵守 

 

□ 》》遺言の方式の制限と禁止規範 、 》》パソコン等による自筆証書遺言(財産目録)の作成 、 》》自筆証書遺言の加除訂正の仕方 をご覧ください。

 

2.  一義的で明快、一貫性・整合性、簡潔かつ明瞭 

 

(1)一義的で明快な表現(あいまいな表現をしない)

 

 遺言書は、相続人が解釈に迷うことのないよう、誰に、何を、どれだけ相続させる(遺贈する)等を、一義的で明快な表現で定めることが重要です。

 あいまいな表現だと、遺言者の真意がわからず、遺言が無効となる恐れがあります。

 

(2)遺言条項間で矛盾・抵触しない(一貫性・整合性があり、簡潔かつ明瞭な表現)

 

 遺言書は、相続人が解釈に迷うことのないよう、遺言条項間で矛盾・抵触しないよう留意することが重要です。一貫性・整合性を保ちながら、簡潔かつ明瞭な表現で定めましょう。 

 遺言条項間で矛盾・抵触する場合は、遺言者の真意が確定できないとして無効とされるおそれがあります。

 

3. 相続人が容易に対象物(客体)を「特定」できること

 

 遺言は、遺言執行を見据えて、対象物(客体)の「特定」に万全を期す必要があります。 客観的に特定可能で、解釈上疑義が生じないよう、特定できる記載が必要です。 

 不動産、預貯金等は、遺言の効力が発生したら直ちに権利移転の効力が生じ得る程度に特定されていなければなりません。   

 

 「全財産を相続させる遺言」や「包括遺贈」の遺言の場合は、不動産、預貯金等について特定する記載は必要ありません。 「遺言者所有のすべての不動産」というように、一括して表示しても特定可能です。

 

 なお、相続人にその存在を明らかにしておきたいときは特定する記載が必要です。

 また、不動産、預貯金等について特定する記載によって、遺言執行を円滑に進めることが期待できます。 

 

詳しくは、 》》 遺贈対象物(客体)の特定の仕方 をご覧ください。

 

4. 遺言者、受遺者・受贈者を定義(特定)する場合

 

(1) 遺言者、受遺者・受贈者を定義(特定)する場合は、人称代名詞は使いません

 

 代名詞には、人を表わすものと、事物・場所・方角を表わすものとがあります。

 人を表わすものを人称代名詞といい、書き手自身(遺言者)を表わす一人称代名詞(「 私」等)、受け手(受遺者・受贈者)を表わす二人称代名詞、第三者を表わす三人称代名詞があります。 

 遺言では、解釈の余地を生じさせないため、遺言者、受遺者・受贈者を表わす場合は人称代名詞を使わないことをおすすめします。 

 

※ 相続人や受遺者等法律行為の相手方を特定するために生年月日を付記しますが、遺言者本人には、一般的に付けません。 

 

(2) 受遺者・受贈者の特定の仕方

 

① 相続させる相手の特定の仕方

 

 相続人については、氏名、遺言者との続柄、生年月日を記載します。(遺言者との続柄を記載し住所は書かないのが一般的です。)

 

② 遺贈する相手が第三者の場合(債務者)の特定の仕方

 

 遺贈する相手については、氏名、生年月日、住所を記載します。住所は遺言の執行にあたっても有用な情報となります。

 

③ 権利を遺贈する場合、その債務者の特定の仕方

 

 権利を遺贈する場合、その債務者については氏名、住所を記載します。 

 

④ 法人の場合

 

 法人の場合は、法人の正式「名称・商号」と「主たる事務所(又は本店)の所在地」で特定します。

 

5. 「与える」、「譲る」、「遺贈する」について

 

 財産を「与える」・「譲る」は、多くの場合、「相続させる」と解することができますが、「遺贈する」は、例え相続人が受取人であっても、判例では遺贈としか解釈できないとされています。  

 

 なお、疑義が生じないよう「与える」「譲る」もなるべく使わないようにしましょう。   

 

6. 「相続させる」と「遺贈する」

 

 法定相続人に財産を譲る場合は「相続させる」と表現し、法定相続人以外に対するものは「遺贈する」と書きます。

 

 なお、法定相続人以外に財産をあげる場合に「相続させる」と書いた場合も、「遺贈する」と置き換えて捉えることとなります。 

 相続の効力は生じないが、遺贈の効力が生じます(平成3年最判)。 

(出典:『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』23頁)

 

□ 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違いについては 》》「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言) をご覧ください。  

 

7. 「『有する』一切の財産」と「『所有する』一切の財産」の違い

 

 「『有する』一切の財産を相続させる(遺贈する)」は、全財産を相続させる遺言(又は包括遺贈)であることを明確にした表現です。単に、「『所有する』一切の財産を相続させる」と表記した場合は、特定遺贈と解釈される余地があります。(特定遺贈には債務は含まれません。)

 

「遺言者の所有する財産」は、形式的には遺言者の有する、所有権の対象となるプラスの財産のみを指すこととなり、適切でありません。(出典:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.64頁)  

 

「遺言者の所有する」と記載する例もあるが、承継される財産には積極財産のみならず消極財産(債務)もむくまれるから、適切でない。(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版。147頁)  

 

(※) 相続開始時に「『有する』一切の財産」について  

 

  「相続開始時に『有する』一切の財産」の文言は、遺言作成後に取得する財産も含むことを明確にした表現です。 なお、「相続開始時に有する」の文言は、なくても解釈上問題はありません。   

 

8. 遺言者の死亡『より前』に受遺者が死亡したときはと、死亡『以前』に受遺者が死亡したときはの違い  

 

 「死亡以前に」は、死亡時を含みますが、 「死亡より前に」は、死亡時を含みません。「死亡より前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合は、停止条件の不成就により、遺贈の効果が生じないことになります。

 「死亡以前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合についても停止条件は成就し、遺贈の効果が生じます。    

 

(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁) 

 

9. 「以前」「以後」「以上」「以下」

 

 「以」には、時間的前後関係を表わす言葉として、「そこを起点(基準となる時点)として」という意味があります。「以前」、「以後」及び「以降」いずれも起点を含みます 。

 起点を含まない場合には、「より前に」や「より後に」といった表現が用いられます。

 

 また、「以」には、一定の数量を基準として多寡関係を表わす言葉として、「それを基準値として」という意味もあります。「以上」や「以下」いずれも基準値を含みます 。 

 基準値を含まない場合には、「超える」若しくは「未満」「満たない」「達しない」といった表現が用いられます。

 

 基準点(令和3年4月1日)を含むときは、「令和3年4月1日『以前』に」又は「令和3年4月1日『以後』に」と表記し、基準点(令和3年4月1日)を含まないときは、「令和3年3月31日より『前』に」又は「令和3年4月2日より『後』に」と表記します。

 

「令和3年4月1日以前に」は令和3年4月1日を含みますが、 「令和3年4月1日より前に」は令和3年4月1日は含まれません。

「令和3年4月1日以後に」は令和3年4月1日を含みますが、 「令和3年4月1日より後に」は令和3年4月1日は含まれません。 

 

10. 「又は」「若しくは」

 

 AB」2つのものを「or」でつなげる(AかBのどちらか)ときは、A又はB」といった表現が用いられます。

 

 「ABC」3つ以上のものを「or」でつなげる(AかBかCのいずれか)ときは、A、B又はC」といった表現が用いられます。(最後に又は」を使い、それ以外のところは「、」を使う。)

 

 大きなグループと小さなグループがある場合、一番大きなグループ分け(一次分類)に又は」を、それより小さなグループ分け(二次分類)に「若しくは」を使います。

 「又は」で結びつけられた大きなグループ(一次分類)のなかで、より小さなグループ分け(二次分類)を行う場合は、又は」を使い、それ以外のところは「若しくは」を使うことを意味します。

 

具体例(民法111条1項2号)のように用います。

 代理人の死亡「又は」代理人が破産手続開始の決定「若しくは」後見開始の審判を受けたこと。 

 

11. 「及び」「並びに」

 

 「AB」2つのものを「and」でつなげる(AとBの両方)ときは、A及びB」といった表現が用いられます。

 

 「ABC」3つ以上のものを「and」でつなげる(AとBとCの全て)ときは、A、B及びC」といった表現が用いられます。(最後に及び」を使い、それ以外のところは「、」を使う。)

 

 大きなグループと小さなグループがある場合は、一番大きなグループ分け(一次分類)に「並びに」を、それより小さなグループ分け(二次分類)に「及び」を使います。

 

具体例(民法974条2号)のように用います。

 推定相続人「及び」受遺者「並びに」これらの配偶者「及び」直系血族(以下略) 

 

■ 大きなグループと小さなグループに分ける場合(一次分類と二次分類をする場合)は、大きなグループ分け(一次分類)に「並びに」を、小さなグループ分け(二次分類)には「及び」を使います。

 例えば、「A及びBの引き渡し並びにCの受領」のように用います。

 

(出典:淵邊善彦(2017)『契約書の見方・作り方』日本経済新聞出版社.46-50頁)

 

12. 「推定する」と「みなす」の使い方

 

■ 「A円の損害があったものと推定する」と規定した場合に、実際の損害がB円と立証できた場合は、B円の損害が認定されます。

 

■ 「みなす」の場合は、実際の損害がいくらであろうと、A円の損害が認定されることとなります。    

 

(出典:淵邊善彦(2017)『契約書の見方・作り方』日本経済新聞出版社.46-50頁)

 

13. 「漢字」で書くか、「ひらがな」にするか

 

① 「法令における漢字使用等について」では、「副詞」については原則として漢字で書くものとされ、「接続詞」についてはひらがなで書くことになっています。(ただし、「及び」、「並びに」、「又は」、「若しくは」については漢字で書くこととされている。)

 

➁ 「とき」と「時」

 

 法令用語としての「とき」は仮定的条件を示す言葉を表すときに用います。

 法令用語としての「時」は時点や時間を表すときに用います。

 

③ 「もの」と「者」  

 

 一般的に、法律上の人格を有するもの(自然人及び法人)を指す場合は「者」が用いられます。法律上人格を有しないもの(混在を含む)を表すときは「もの」を用います。

 

 「もの」は、

①「者」又は「物」にあたらない抽象的なものを指す場合、

②あるものにさらに要件を加えて限定する場合、 

 

③ある行為の主体として、人格のない社団又は財団を指す場合、あるいは、これらと個人・法人とを合わせて指す場合で用いられます。

 

④ 「もの」と「物」

 

 有体物である物件を表すときは「物」を用います。有体物でないもの(混在を含む)を表すときは「もの」を用います。  

 

(参考文献:吉田利宏(2020)『新法令用語の常識』日本評論社.)  

 

14. 助詞「の」の使い方に注意

 

 助詞の「の」は働きには複数の種類があります。異なる解釈が可能であることから、解釈の余地のない、一義的で明解な言い回しをしましょう。

 

「配偶者(妻)に法定相続分を相続させる場合」

 

 ✖  「妻○○○○に法定相続分の2分の1を相続させる」

 〇 「妻○○○○に法定相続分を相続させる」

 

 〇 「妻○○○○に2分の1を相続させる」

 

「配偶者(妻)に法定相続分の半分を相続させる場合」

 

 ✖  「妻○○○○に法定相続分の2分の1を相続させる」

 

 〇 「妻○○○○に4分の1を相続させる」 

 

15.  「~と~との「~との違い

 

 並列助詞の「と」の繰り返しについては省略されることが一般的ですが、入れることにより何らかの効果がある場合もあります。   

 

16. 財産の価格を表す数字

 

 改ざんの恐れがあるときは、漢数字(大字(だいじ))をおすすめします。 

 

17. 金○○○○万円の円の次の「也」

 

 円の次に「也」という文字を付け加えるのは、円の次に「○○銭」と付け加えられて金額が偽造されるのを防ぐためでしたが、そのおそれがないときは不要です。(なお、つけても問題ない。) 

 

17. 句読点の打ち方  (読点の位置によって文章の意味が変わることがある)

 

  読点は文章を読みやすくするために打つものなので、過度に神経質になる必要はありません。

 しかし、遺言の場合、読点(「、」)が無いことによって、複数の意味に解釈できる場合があります。また、読点を打つ位置によって意味が変わることがあります。 誤読を避けるために必要な場合は、必ず読点をうちましょう。  

 

➀ 遺言の場合、主語を明確にするために読点(「、」)を打ちます

 

 また、「長い主語」「長い修飾語」のあとには、関係を明確にするために読点を打ちます。(関係が明確であれば特に読点を打つ必要はない)

 

② 節と節の間に読点(「、」)を打ちます。(「重文」の区切り、「複文」の区切りに読点(「、」)を打つ)

 

■「重文」とは、単文(主語と述語のある文)を2つ以上並列させ、結びつけた文章のことです。 

(例)妻に4分の3を相続させ、長男に4分の1 を相続させる。   

■「複文」とは、単文の基本となる主語と述語のほかに、修飾語(修飾部)があり、修飾部の中にも主語と述語の文節が含まれている文章のことです。 

 (例)遺言者は、前条項に記載したもの以外に相続財産が見つかったときは、それらを全て妻に相続させる。

 

 また、複文の場合、修飾語・修飾部がどこにかかるか分かり難く、意味が誤解される恐れがあるときは、修飾関係を明確にするため読点を打ちます。

 

 前置きの節や語句、挿入された節や語句を区切るため読点を打ちます。

 

③ 語句や名詞を並べる場合や、漢字やひらがなが連続する場合は、読みやすくするため読点(「、」)を打ちます(中点(「・」)を使うこともあります)

 

④ 逆接の関係や原因と結果の関係を述べる場合は、関係性を明確にするため読点(「、」)を打ちます

 

⑤ 接続詞の前又は後には、ケースバイケースで、読みやすいよう読点(「、」)を打ちます

 

■ 接続詞の直前が、名詞ではなく動詞の場合は、接続詞の前に読点を打ちます。

 

⑥ かぎ括弧の前後には読点(「、」)を打たなくてよいとされています  

 

18. 誤字、脱字に、特に注意

 

 誤字、脱字を見つけたら正規のやり方で訂正しましょう。そうしないと不動産登記に事実上使えなくなることがあります。 

 

19. その他 

 

※その他、  》》 離婚協議書表現の注意点 、》》契約書作成のポイント  も合わせてご覧ください。 


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