不動産を「換価分割」で相続させる遺言(換価遺言)と譲渡所得税

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント  関連情報 

➤ 遺産分割方法の指定 

➤ 換価分割で相続させる遺言と譲渡所得税

➤ 全財産を売却するなど換価処分して残金を相続させる(遺産の清算配分)遺言文例  

1. 換価遺言(遺言による換価分割⦅価格分割⦆)の長所と問題点

 

  換価遺言(遺言による換価分割⦅価格分割⦆)は、遺言により、相続開始後、相続財産を未分割のまま売却し、現金化して分ける方法です。

  換価遺言によって、相続させる遺言(又は遺贈)の実質的な効果を変えることなく、相続手続きや不動産の売却手続きの手間及び費用を軽減できます。

 

  換価遺言(遺言による換価分割⦅価格分割⦆)は、現物分割が困難で代償分割もできない場合に検討することが多いと言われています。

 

  ただし、換価遺言は公平に分けることができますが、対象財産に住んでいる人がいる場合は、新たに住まいを探さなければならないという問題点があります。また、処分費用がかることや、売却益に譲渡所得税が課せられる場合があるなどの欠点があります。    

 

2. 換価遺言に伴う譲渡所得税

 

  換価遺言(遺言による換価分割⦅価格分割⦆)による不動産の相続(又は受遺)は、不動産の購入時より評価額が上がっていると、増加分について、相続を受けた相続人(又は受遺者)に譲渡所得税(値上がりによる増加益に対する税)が課税されます。

 

3. 譲渡所得税の概要 

 

① 短期譲渡所得:所有期間5年以下の場合(※1) 

  所得税 30.63%(復興税0.63%を含む(※2))、地方税 9% 

 

② 長期譲渡所得:所有期間5年超の場合(※1)  

  所得税 15.315%(復興税0.315%を含む(※2))、地方税 5%

 

(※1)基準日は譲渡をした年の1月1日  

(※2)平成25年から令和19年まで 

 

4.「譲渡所得」の計算式

 

  譲渡所得=譲渡収入の金額 (※1) −【(取得費 (※2)+ 譲渡費用) (※3)】

 

 (※1)相続(又は受遺)した不動産の時価

 (※2)相続(又は受遺)した不動産の購入価格 (※4)+仲介手数料+登記費用+印紙税+【設備費+改良費 − 減価償却費相当額】

 (※3)仲介手数料+登記費用+印紙税+測量費用+取り壊し費用など

 

 ※4 不動産の購入価格が分からないときや、取得費よりも相続(又は受遺)した不動産の時価の5%の方が大きいときは、相続(又は受遺)した不動産の時価の5%が「取得費」とみなされます。

 

5. 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例

 

  相続(又は遺贈)により取得した、被相続人の居住用家屋又は家屋の敷地等を、平成2841日から令和91231日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができます。 

 

(注)令和611日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続(又は遺贈)により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。

 

6. 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の対象となる「被相続人居住用家屋」

 

  特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)をいいます。

 

昭和56531日以前に建築されたこと。

区分所有建物登記がされている建物でないこと。

③ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

 

  なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。

 

7. 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」

 

  特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。

 

  なお、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。

 

8. 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けるための要件  

(1)売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

(2)次のイ、ロまたはハの売却をしたこと。

イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

(注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。

(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。

(ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。

ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)および(ハ)の要件に当てはまることが必要です。

(イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。

(ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。

(ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

ハ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、次の(イ)および(ロ)または(イ)および(ハ)の要件に当てはまること(上記イに掲げる譲渡に該当するものを除きます。)。(※)

(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。

(ロ) 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと。

(ハ) 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の全部の取壊し等を行ったこと。

※令和6年1月1日以後に行う譲渡に限ります。

(3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(4)売却代金が1億円以下であること。

この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。

このため、相続の時から被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合であっても、被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。

 

(5.6.7.8の出所:国税庁ホームページ、No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁 (nta.go.jp) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm )

 

(参考資料:国税庁ホームページ、換価遺言が行われた場合の課税関係)


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