予備的遺言

予備的遺言とは、相続人(又は受遺者)が、遺言者より先に又は同時に死亡した場合等、相続開始時に遺言に定めたとおりに遺言を執行することができない事態が生じていた場合に備えて予め定めておく、停止条件付遺言です。

1. 相続における同時存在の原則

 

  相続は死亡によって開始するとされています。相続開始時(相続人の死亡のとき)に相続人は存在していなければならないとする原則を「相続における同時存在の原則」といいます。 

 

民法882条(相続開始の原因)

相続は、死亡によって開始する。

 

2. 同時死亡の推定

 

  民法では、数人が死亡して死亡の先後が明らかでないときは、全員が同時に死亡したものと推定されています。同時死亡者相互の間には相続関係は生じません。  

 

民法32条の2(同時死亡の推定) 

数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。 

 

3. 予備的遺言 

 

  相続開始時に遺言に定めたとおりに遺言を執行することができない事態が生じていた場合、当該遺言をどのように解釈すべきか問題が生じることがあります。

 

  予備的遺言とは、相続人又は受遺者が、遺言者より先に又は同時に死亡した場合等、相続開始時に遺言に定めたとおりに遺言を執行することができない事態が生じていた場合に備え、あらかじめ定めておく、停止条件付遺言です。

 

  遺言に定めたとおりに遺言を執行することができない事態としては、相続放棄又は遺贈の放棄も含まれます。

 

4. 予備的遺言(補充遺贈)

 

  相続させる相手(又は受遺者)が遺言者より前に又は同時に亡くなったとき、又は、相続又は遺贈が放棄によってその効力を失ったときに相続させる(又は遺贈する)予定だった財産を誰に承継させるかを遺言することができます(民法995条ただし書き)。 

 

ポイント 詳しくは 》》補充遺贈 をご覧ください。

 

5. 代襲相続と予備的遺言(補充遺贈)

 

  相続させる旨の遺言による法定相続人に対する遺贈(法定相続分を除く部分)は、遺言者の死亡以前に相続させるべき法定相続人が死亡したときはその代襲者に相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、代襲相続はできないととされています。  

  したがって、相続人が遺言者より前に又は同時に死亡し場合は代襲相続人に法定相続分を超える部分を含めて代襲相続させたいときはその旨の予備的遺言が必要です。

 

ポイント 詳しくは 》》代襲相続 をご覧ください。

 

 

予備的遺言で、遺言者より先にまたは同時に推定相続人が死亡した場合は次順位の推定相続人に相続させる旨を明らかにする

 

6. 予備的遺言執行者の指定

 

  遺言で指定した遺言執行者の死亡(又は指定した法人の消滅)、若しくは指定した遺言執行者の就任辞退や意思能力(法律行為能力)の喪失に備え、予備的遺言執行者を指定しておくことができます。

 

ポイント 詳しくは 》》予備的遺言執行者の指定 をご覧ください

 


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