遺留分~妻子などに認められる遺産の最低保証~

□ 遺留分とは、被相続人が、遺言で、特定の相続人や第三者に、相続・遺贈や死因贈与、生前贈与で与えた財産について、相続人が、法定相続分の一定の割合まで取り戻すことができる権利のことです。 

 

□ 遺留分を取り戻すことが「できる」人は、 

① 配偶者 

② 子(代襲相続になる場合の孫等も含む)(民法887条) 

③ 直系尊属(父母等) 

 

※ 「兄弟姉妹」に遺留分はありません。 

※ 相続権を失った者(相続欠格者、相続人を廃除された者、相続を放棄した者)に遺留分はありません。 

 

□ 遺留分割合:取り戻すことができる割合

① 相続人が直系尊属(両親等)だけの場合  法定相続分の3分の1

② それ以外                法定相続分の2分の1

 

□ 遺留分は放棄することができます。ただし、相続開始前に放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。なお、遺留分を放棄していても「相続放棄」したことにはならないことに注意。

 

□ 遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)は、相続の開始及び遺留分侵害額請求すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しなければ消滅します。

 また、相続開始の時(亡くなったとき)から10年を経過すると消滅します。

 

□ 法律では、遺言で遺留分を侵害してはならない、と定めているわけではありません。遺留分さえもらえなかった相続人は遺留分割合まで相続財産を取り戻すここと(侵害額請求)ができる、といっているにすぎません。 

注意事 項 民法改正(30.7.13公布)

 

□ 遺留分減殺請求は、改正前は、遺留分侵害の現物でしか返還を求めることができませんでした。また、遺留分減殺請求によって遺贈が無効となり共有関係が当然に生ずることとされていたことから、不動産の場合は共有にするしかなく、これらに伴って事業継承に支障が生じることがありました。

 こうした問題を解消するため、遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権に変更され、現物ではなく金銭で支払うことができるようになりました(事業承継の場合の自社株について現物ではなく金銭で支払うことができるようになった)。また、金銭をすぐに準備できないときは裁判所に支払いの猶予を求めることができようになりました。(施行は令和元年7月1日)

 

□ (遺留分侵害額請求権の時効) 現行法と同じです(知った時から1年間、相続開始の時から10年)。なお、この請求権を行使することにより生じた金銭債権の消滅時効については、民法の一般の債権と同じです(債権法改正により令和2年4月1日からは5年または10年になります)。 

民法(新)1046条

1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第1042条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第一項に規定する贈与の価額

二 第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント 関連情報 

➤ 遺留分減殺請求

➤ 遺留分の計算の仕方

1. 遺言と遺留分の関係

 

 遺留分とは、遺言で特定の相続人や第三者に遺贈(または生前贈与)した財産を、遺留分さえももらえなかった相続人が、法定相続分の一定の割合まで取り戻すことができる権利のことです。

 遺留分の趣旨は、遺言による財産の分配により一部の相続人のみ生活が不安定になるといったことのないようにすることにあります。

 ただし、法律は遺留分を侵害してはならない、と定めているわけではありません。遺留分をもらえなかった相続人は、遺留分割合に達するまで相続財産を取り戻すことができる、と定めているだけで、遺留分減殺請求がなされなければ、遺留分を侵害する遺言といえども有効です。 

 

 遺言で、遺留分を請求された場合はどの財産から支払うかについて指示をすることができます(遺留分減殺先の指定)。つまり、遺言で遺留分減殺を特定の者に免除することができます。

 また、遺言で、価格による弁償にする、あるいは遺留分減殺の順序を定めることができます(例えば、預金や現金を先にするという定め)。ただし、民法の定める遺留分減殺の順序(遺贈→死因贈与→生前贈与の順)と異なる順序にはできません。

 

注意事 項  「特別受益の持ち戻し免除」の遺言があったときの遺留分の計算

 

 遺言で特別受益の持ち戻しを免除する旨の指示があるときは、遺産分割の相続分算定においては特別受益の持ち戻しを免除しますが、遺留分算定では、相続人に対し相続開始前10年以内に贈与した財産については、遺留分制度の趣旨に鑑み遺留分の算定の基礎となる財産に算入します。

 算入する特別受益の価格は、贈与時の価格ではなく相続開始時の価格に換算した価格です。 

 

 また、遺産分割において、特別受益者本人以外の相続人全員が「特別受益分は考慮しない」と認めた場合も遺留分の算定の基礎となる財産に算入します。

 

 

2. 減殺請求の対象である贈与の取得時効

 

Q 贈与の受贈者(特別受益者)は10年又は20年占有すれば取得時効は成立するか? 

 

A 受贈者(特別受益者)は、取得時効(自己の物の取得時効)を援用できない。

 

 

3. 遺留分を取り戻すことが「できる」人(遺留分権利者) 

 

① 配偶者 

② 子(代襲相続になる場合の孫等も含まれます)。民法887条 

③ 直系尊属(父母等)

 

※ 「兄弟姉妹」には遺留分はありません。 

※ 「相続欠格者」「相続を廃除された者」「相続を放棄した者」は遺留分はありません。 

※ 逆のパターンとして、「遺留分を放棄」していても、「相続放棄」したことにはなりません。

※ 「相続人廃除」や「相続欠格」によって子(本来の相続人)が相続人でなくなっても孫は代襲相続できます。一方、子(本来の相続人)が「相続放棄」した場合には、孫は代襲相続は認められません。

 

 

4. 遺留分を取り戻すことができる割合(遺留分の割合:民法1028条)

 

共同相続人に帰属する相続財産に対する遺留分の割合(総体的遺留分)は、

 

① 「直系尊属(両親等)だけが相続人」の場合 法定相続分の3分の1

 

② それ以外 法定相続分の2分の1

 

※ 「法定相続分」 

① 配偶者2分の1、子 2分の1

② 子がいない場合 配偶者3分の2 直系尊属3分の1

③ 子も直系尊属もいない場合 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1

 

 

5. 遺留分を取り戻すことができないケース(遺留分減殺等の例外)

 

① 遺言で遺留分減殺を免除した者からは遺留分を取り戻すことができません。

 

② 遺産分割で寄与分・特別寄与料として取得した財産は、遺留分侵害額請求の対象から免れます。

 

③ 被相続人の死亡前に、推定相続人全員の合意に基づいて家庭裁判所の許可を受けると、経営の後継者が受けた株式を、遺留分算定の基礎となる財産に算入しないことができます。(平成20年~)

 

④ 民法1030条の1年間という要件を満たさない贈与(特別受益)は、受益者たる相続人に酷である等特段の事情があれば減殺の対象とならないとされています。

 

 

6. 遺留分の放棄

 

(1) 相続開始前の遺留分の放棄

 

 相続開始前(被相続人の生存中)の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときのみ有効です。「本人が家庭裁判所に申し出て許可を得る」ことが必要です(1043条)。 

 裁判所は、放棄が本人の自由意志に基づくものか、その理由が客観的にみて合理性、必要性があるか、放棄と引き換えに代償が得られているか、などを審査して許可します。(一方、「相続放棄」は、相続開始前にはできません。)

 

 

(2) 相続開始後の遺留分の放棄 

 

 相続開始後の遺留分の放棄はいつでもできます。家庭裁判所の許可を得ることなく有効となります。注意が必要です。

 

 

(3) 遺留分放棄の効果

 

 相続開始前に遺留分を放棄させることによって、被相続人が自由に処分できる財産の範囲が広がります。ただし、遺留分放棄によって他の相続人の遺留分が増えることはありません。

 

 相続開始前に遺留分を放棄しても、相続権は残り、遺産分割で自分の相続を主張することができます。遺留分を放棄した者の相続分をゼロにするには、遺言で全財産を他の相続人等にあげることが必要です。

 

 遺留分を放棄していても、相続開始後3か月以内に相続放棄または相続の限定承認をしなければ相続の自然承認となり、負債を含め財産を引き継ぐことになります。

 「相続開始前に遺留分を放棄」し、財産は何ももらえないのに「負債だけを法定相続分引き継ぐ」恐れがあります。 そうした場合は、相続開始後、3か月以内に相続放棄の手続きをすることが必要です。

 

※ 遺言がなければ、遺留分を放棄しても遺留分の問題は起こりません。(法定相続分となります。) 

 

 

7. 遺留分の放棄と遺留分侵害額請求の時効

 

 遺留分侵害額請求を、「相続の開始及び遺留分侵害額請求すべき贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間」(時効期間中)しなければ、遺留分の放棄をしたのと効果は同じです。ただし、遺留分侵害額請求権の消滅(除斥期間)は、相続開始の時(亡くなったとき)から10年を経過したときです。

 

 

※ 遺留分侵害額請求権の時効は現行法と同じです(知った時から1年間、相続開始の時から10年)。なお、この請求権を行使することにより生じた金銭債権の消滅時効については、民法の一般の債権と同様です(債権法改正により2020年4月1日からは5年または10年)。

相続人の組合せ別の「遺留分」(個別的遺留分)

 

相続人の組合せ

配偶者

直系尊属(父母等)

兄弟姉妹

配偶者と子

1/4

1/4

 

 

配偶者と直系尊属

2/6

 

1/6

 

配偶者と兄弟姉妹

3/8

 

 

なし

配偶者だけ

1/2

 

 

 

子だけ

 

1/2

 

 

直系尊属だけ

 

 

1/3

 

兄弟姉妹だけ

 

 

 

 なし

 遺留分割合の組み合わせ表(個別的遺留分)

 

 

配偶者

子ども

直系尊属

きょうだい

 

 組み合わせ

4分の1

4分の1

なし

なし

6分の2

(いない)

6分の1

なし

8分の3

(いない)

(いない)

 (いる)なし

2分の1

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

2分の1

(いる)なし

なし

(いない)

2分の1

(いない)

なし

(いない)

2分の1

(いる)なし

(いない)

(いない)

2分の1

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

6分の1

(いる)なし

(いない)

(いない)

6分の1

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

なし