□ 財産管理委任契約を任意後見契約の付随的契約として締結する場合は、任意代理契約と呼びます。
足が不自由になると銀行に行くのも大変です。寝たきりになってしまうと預金をおろしに行くこともできなくなります。財産管理委任契約(任意代理契約)は、こうしたときに、金融機関との取り引き・財産管理、介護サービスの利用契約・支払い などの事務手続きを依頼する契約です。
□ 見守り契約は任意後見の開始時期の判断を依頼する契約です。
任意後見契約の問題点として、本人が判断能力の低下に気付かず家庭裁判所への「任意後見監督人」選任の申し立てがなされない、という点があります。
1. 財産管理委任契約
(1)財産管理委任契約(任意代理契約)とは
財産管理委任契約は、判断能力は十分にあるが身体的に厳しいときに、財産管理、金融機関との取り引き(年金の受け取り など)、療養看護の手配(介護サービスの利用契約・支払い など)等の事務手続きを依頼する契約です。
財産管理委任契約は公正証書で作成することは義務付けられていませんが、契約の存在を明確にするため、公正証書が望ましいと考えます。
なお、財産管理の委任契約を任意後見契約の付随的契約として締結する場合は任意代理契約と呼びます。
(2)財産管理委任契約で依頼する内容
財産管理委任契約で依頼する内容は、下記のような財産管理と療養看護です。財産管理委任契約には依頼する事務、費用の負担について定めます。
(財産管理委任契約で依頼する財産管理の例)
① 預貯金(通帳・カード)の管理、年金・保険・有価証券(株式等)の管理。現金の管理。金融機関での預け入れ、引き出し、振り込み
② 税金や電気・ガス・水道代等公共料金の支払い、施設利用料・入院費・家賃などの支払い、年金などの収入の受取り
(財産管理委任契約で依頼する療養看護の例)
① 入院手続きや介護施設への入所契約、介護契約などの手続き。入院中、退院時の手続きなど。
② 要介護認定の申請、介護契約、施設への入所契約、医療契約など。
※ 財産管理委任契約で委任する内容は、「代理権目録」に記載します。
(3)財産管理委任契約はいつからスタートするか
ア、財産管理委任契約は契約を結んだときからスタートさせるのが一般的です。
ただし、身体的に厳しくなったときに開始するようにすることもできます。その場合は、契約中に「本契約は、委任者が財産管理行為の依頼を申し入れ、受任者がこれを承諾したときにその効力を生ずる」と定めます。
イ、 任意後見契約(移行型)の特約で財産管理の委任契約(任意代理契約)を結ぶ場合
判断能力が十分にあるうちから、任意代理人(頼んだ人)に、財産管理等の事務を、自分に代わってやってもらいはじめます。
判断能力が低下した後は、「任意後見監督人」の監督のもとで、「任意後見人」として事務処理を続けてもらいます。
この場合、任意後見契約締結時に、特約で「財産管理の委任契約(任意代理契約)」を結びます。任意代理契約には任意後見契約の効力が生じたら代理権が消滅する、という規定を設けます。
ウ、 短期間の契約
財産管理委任契約は、長期の入院などの場合に、その間に限って契約することもできます。
2. 見守り契約
(1)見守り契約とは
見守り契約は任意後見開始時期の判断を依頼する契約です。
任意後見契約の問題点として、契約を結んでいても、認知症の進行などによる判断能力の低下に本人が気付かず、家庭裁判所への「任意後見監督人」選任の申し立てがなされないことがある、という点があります。
この問題を解決するため、任意後見開始時期の判断を頼んでおく契約を見守り契約と呼びます。
見守り契約は任意後見契約と同時に結ぶことが望ましいと考えます。
(2)見守り契約で依頼すること
見守り契約では、月に一回電話連絡をし、半年に一度面談するなど定期的に連絡を取り合い、本人の状況を見守りながら任意後見に移行する時期を見極めます。
見守り契約は、任意後見への確実な移行に有効です。任意後見契約と同時に契約を結ぶことをおすすめします。