□ 遺言状は、認知症になったら、書いても効力がありません。 事業を後継者に継がせたいときは、早めに遺言状を書きましょう。
□ 家を建て替えた場合は遺言状は書き直すことをおすすめします。
□ 相続させる相手が、万が一亡くなってしまった場合は遺言状は作り直すことをおすすめします。
□ 遺言状は書いてから10年経ったら見直すことをおすすめします。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 遺言状は何歳になったら書けばよいか
遺言状は満15歳以上であればいつでも書けます。保険と同じで遅すぎたということはあっても早すぎるということはありません。
認知症になってしまったら遺言状を書いても効力が認められなくなってしまいます。あまり年齢が行ってから遺言状を書くと、遺言能力がなかったのではと疑いを持たれるおそれがあります。
親が少しボケてきたと感じたら、遺言状の作成を促すことも必要かもしれませんね。
なお、遺言状は遺言をする時点で間違いなく自分の意思を表示できれば有効です。少しボケてきたと感じても 医師の診断を受けて診断書をもらい公正証書遺言を作成すれば大丈夫です。
シンガーソングライターで小説家のさだまさしさんは、「小説もエッセーも締め切りがあるから書けるんです」と言っていますが、遺言状も同じです。65歳は遺言状の締め切りと考え、遺言状を書きましょう。特に事業を後継者に継がせたいときは遺言状は早めに書きましょう。
「そうは言っても、まだ不確定要素が多いから遺産分割の方針を決められない」といった場合は、遺産分割方法を定めることを委託する、「遺産分割の指定の委託」の遺言状があります。ただし、遺言者の意向を理解し、公平公正に分割方法を指定できる者を受託者に指名する必要があります。
2. 遺言状を書く前の準備
(1) 財産を金銭に換算した財産リストを作る
まず、財産リストを作ります。相続可能な財産を調査し、土地、建物、預金等に分け、財産を金銭に換算した財産リストを作成します。財産リストは相続可能な財産をすべて記載しましょう。
(2) 相続人調査
相続人調査とは法定相続人(推定相続人)の把握です。特に、子がいない場合は、「親」等直系尊属の戸籍謄本を取得し、現在の親族関係を正確に把握することが必要です。子も直系尊属もいない場合は「兄弟姉妹」等の戸籍謄本を取得し、現在の親族関係を把握します。
※ 「親」等や「兄弟姉妹」等の本籍地が分からない場合は、住民票を「本籍地表示あり」で入手し調べることができます。
3. 遺言状を書いたことを相続人にオープンにする?しない?
自分に不利な遺言をされた相続人は、理由をさがして無効を主張することがあります。そのとき理由として使われるものとして、①「筆跡が違う」(遺言状の偽造・変造)、②方式違反(自筆証書遺言は民法で様式が定められています)、③認知症で遺言できる状況ではなかった(遺言能力の欠如)、④遺言者に対する詐欺・強要があった(取消事由)などがあげられます。
遺言状を「書いたこと」を相続人にオープンにしておくことは、遺産を巡る争族の防止につながると考えられますが、一方で、遺言状を書いたことや内容に関し、家庭内に争いが起きる恐れがあります。
したがって、事情によってですが、妻だけに遺言状を作ったことやそのありかを教えておくのがよい場合もあります。
4. 遺言状の更新
遺言状を作った後、「家を建て替えた」など財産の大きな変化があった場合は遺言状を書き直しましょう。
相続させる(又は遺贈する)相手が遺言者より先に亡くなった場合、あるいは、推定相続人(法定相続人)が変わった場合は、遺言書を書き直すことをおすすめします。
遺言状作成後10年以上経過したら、財産内容や財産の評価額の変化、情況の変化、遺言者自身の心情の変化を踏まえて見直しをおこない、必要な場合は遺言状を書き直しましょう。
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