相続財産の全体についての割合を定めて相続させる遺言における遺言者の意思は、相続人に対し、財産全体からその指定した割合による価値相当額を取得させることを意図し、権利関係の確定については遺産分割手続きに委ねるというものです。したがって、相続開始後、相続人全員(包括受遺者を含む)による遺産分割協議が必要です。
※出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.60-61頁
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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
相続財産の全体について割合を定めて相続させる遺言は、相続財産の全体に占める各相続人の相続分率を指定し、指定した各相続人に指定した「持分」を相続させる遺言です。
相続財産の全体について割合を定めて相続させる遺言は、相続分の指定を相続人全員に対して行う場合と効果は同じです。
相続財産の全体について割合を定めて相続させる遺言は、単に相続分の指定をしたにすぎないものとして、権利関係の確定には遺産分割協議が必要になります。
相続財産の全体について割合を定めて相続させる遺言は、相続に伴う不動産の相続登記や預貯金相続(名義変更又は解約払戻し)をする際には遺産分割協議書が必要となります。
相続財産の全体について割合を定めて相続させる遺言により、例示として不動産や預貯金などの個々の遺産を特定しても、遺言者が指定した割合(「持分」)を確定的に取得させる意思を有するのか否か不明確です。
このことにより、遺言執行者を指定しても、遺言通りの遺言執行は困難です。不動産の相続登記においては、登記所の登記官から、「この遺言は単に相続分の指定をしたに過ぎないから、権利関係の確定(登記)には「遺産分割協議書」が必要」と指摘される恐れがあります。同様に、預貯金相続(名義変更又は解約払戻し)においては、金融機関から、前記と同じ趣旨で、払戻しには「遺産分割協議書等」が必要と指摘される恐れがあります。
したがって、相続人間で遺産分割協議ができないかもしくは困難な事情がある場合は、全財産を相続させる遺言をする場合であっても、個々の遺産を相続させる旨の遺言であることが明確にわかるように、「遺産分割方法の指定(現物分割(※))の遺言」と「その余の全財産を相続させる遺言」の組み合わせにすることをお勧めします。
※ 持分での分割を含む。
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