□ 在日外国人は誰でも例外なく日本法の方式で遺言できます。
□ 在日外国人が日本でする遺言の成立及び効力について
遺言能力、遺言の意思表示の瑕疵、遺言の効力発生時期及び遺言の撤回の可否については、遺言の成立時に
おける遺言者の本国法によることになります。ただし、本国の国際私法が遺言者の住所地法を適用すべきと定
めている場合は日本法を適用することになります。
□ 遺言による相続人の指定や相続分の指定、財産処分の可否については、遺言の成立時における遺言者の本国
法によることになります。ただし、本国の国際私法が遺言者の住所地法を適用すべきと定めている場合は、日
本法を適用することになります。
□ アメリカやイギリスの国籍を有する者が日本に住所を有する場合は、預貯金を遺言によって処分するとき及
び日本にある不動産を遺言によって処分するときは日本法を適用することになります。
□ 中国の国籍を有する者が日本に住所を有する場合は、預貯金を遺言によって処分するとき及び、日本にある
不動産を遺言によって処分するときは日本法を適用することになります。
□ 韓国の国籍を有する者が日本に住所を有する場合、その遺言の中で相続準拠法として日本法を指定したとき
は、預貯金を遺言によって処分するときは日本法を適用することになります。また、不動産に関する相続に関
しては、その不動産の所在地法と規定しており、日本にある不動産を遺言によって処分するときは日本法を適
用することになります。
(参考文献:日本行政書士会連合会『 月刊日本行政(2023.3)№.604』35-36頁)
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 準拠法
(1)遺言方式準拠法(遺言の方式要件の準拠法)
日本国内において遺言の方式要件に関し遺言の執行や効力が問題となる場合には、遺言の方式が以下のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とされます。
① 行為地法(遺言者が遺言をした場所の国の法 )
② 遺言の成立又は死亡当時の国籍地法(遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法)
③ 遺言の成立又は死亡当時の住所地法(遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法)
④ 遺言の成立又は死亡当時の常居所地法(遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法)
⑤ 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
本国(自分の国籍のある国)を含む外国において、遺言の方式要件に関し遺言の執行や効力が問題となる場合には本国(自分の国籍のある国)を含む外国の国際私法が指定する準拠法によって方式上の有効性が決定される。
(2) 外国所在の不動産を遺贈する場合
遺言で外国所在の不動産を遺贈する場合には、不動産所在地の国の方式で遺言書を作成する必要があります。
不動産所在地の国の方式で遺言を作成するには、日本にいる外国法事務弁護士に依頼して、領事館でのサイン認証の手続きを利用することなどにより作成することができます。
(3) 法の適用に関する通則法
遺言の方式以外の要件(遺言能力等の要件)については、遺言者の本国の国際私法の定めによるとされています(※1) 。ただし、遺言者の年齢に関する遺言能力については、遺言方式準拠法が適用される結果、日本の民法によることができます(※2)。
※1 法の適用に関する通則法第三十七条 (遺言)
遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
※2 遺言方式準拠法第5条
遺言者の年齢、国籍その他の人的資格による遺言方式の制限は、方式の範囲に属するものとする。
(出典:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.191頁)
(4) 相続
相続は遺言者の本国の国際私法の定めによるとされています(※3) 。
※3 法の適用に関する通則法第三十六条(相続)
相続は、被相続人の本国法による。
(5) 遺言の取消し
遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国の国際私法の定めによるとされています。
2. 在日外国人が日本で遺言するとき
(1)反致主義(※4)を採用している国の外国人が日本で遺言をする場合
在日外国人が日本の民法の方式によりする遺言の本国(自分の国籍のある国)における効力は、本国の国際私法の定めが準拠法を日本法にすることを認めている場合のみ有効です。
※4 反致主義:外国人がする遺言に関し、滞在国の国際私法が本国(国籍のある国)の民法を準拠法としているのに対し、本国(国籍のある国)の国際私法が滞在国の民法を準拠法としている場合は、滞在国の民法の方式により遺言をすることができるとする法制度。
在日外国人が日本で、日本の民法の方式により公正証書遺言を作成する場合は日本語で作成します 。
(2)遺言者の国籍が韓国の場合
韓国の国際私法の定めでは、適用される方式について、「明示的に、指定当時の被相続人の常居所がある国家の法(死亡時までその国家に常居所を維持した場合に限る)を指定するときは、相続は、その法による」としています(したがって、明示的に指定していないときは韓国の民法によることとなる)。
また、不動産に関する相続に関しては、その不動産の所在地法と規定しています。
(参考文献:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.190頁)
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