面会交流権

□ 面会交流権とは、子どもを引き取らなかった親が子どもに面会したり一緒に過ごしたりする権利のことです。

□ 面会交流権は、かっては「面接交渉権」と呼ばれていましたが、民法改正以降は、「面会交流権」が使用されています。

□ 親であれば当然のこととして面会交流が認められるというものではない、とされています。

□ 面会交流の条件については、年齢や生活環境、本人の意向など、子どもの事情も十分に考えて決める必要があります。

□ 子どもと会っているケースほど養育費を支払ってくれる確率が高い、という研究結果もあるようです。

 

□ 平成23年民法改正(平成24年4月1日施行)により、子どもとの面会や交流について協議で定めるよう民法に定められ、離婚届の用紙に、面会交流、養育費の分担について、取り決めをしているか、まだ決めていないかをチェックする欄が設けられました(「まだ決めていない」でも離婚届は受理される)。 

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 面会交流権とは

 

  面会交流権とは、未成年の子を引き取らなかった親(養育看護していない親)が、離婚後又は別居中に子どもに個人的に面会したり一時的に一緒に過ごしたりして交流する権利のことです。 

  面会は子どもとの接触、交流は食事、宿泊など共に過ごす行為を指します。

 

  平成23年民法改正(平成24年4月1日施行)により、離婚をするときは、子との面会及びその他の交流について必要な事項は、その協議で定めることとされました。

 

  離婚前に別居していた際にする面会交流に関する定めは、共同親権を前提になされたものであり、離婚後は、法的には効力を失うと解されています。

 

2. 面会交流が認められないケース

 

  面会交流は親であれば当然のこととして認められるというものではない、とされており、子どもの人格形成や精神発達に有益・必要であることから認められているものです。したがって、子の福祉や利益を害するような場合は制限されます。 

  また、面会交流は子どもの意向も尊重すべきとされ、子が嫌がる場合や子に危害が及ぶことが想定される場合は拒否することができます。

 

①  子どもが拒否している 

② 暴力をふるう、虐待した 

③  力づくで連れていく可能性がある  

④  アルコール依存症、性格破綻  

⑤ お金が あるのに養育費を払わない  

 

  面会交流が実現されないからといって、養育費の支払いを拒むことはできません。 

 

3. 後にトラブルにならないよう離婚協議書に書いておく

 

  離婚に伴う子どもに関するトラブルになかで、面会交流にかかわるものは少なくありません。

  離婚の際には、離婚協議書の文面に具体的な面会交流方法をしっかりと書いておくことが望ましいと言われています。

  具体的には、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引き渡しの方法等を書くことになりますが、親の事情だけでなく、子どもの精神的・肉体的な負担にならないよう、年齢や生活環境、意向など、子どもの事情も十分に考えて決めることが肝要です。  

 

記載事項例 

 

(1) 定期的な面会交流の頻度、各回の面会交流時間の長さ

 

  「月に1回程度、何時間」、「年に5回程度、1回何時間」など

 

(2) 不定期の面会交流の頻度

  

  定期的な面会交流が不適当な場合は不定期の面会・交流について記載します

 

  こどもの夏休み、誕生日、運動会、授業参観、電話や手紙での連絡など 

 

※ メールやラインでのやりとりは面会・交流とは言えませんが、民法第766条の趣旨に鑑み、必要な場合は面会・交流に準じて協議で定めることができるものと考えます。 

 

(3) その他記載事項例 

・  宿泊の有無 

・  面会・交流の場所 

・  日時・場所を誰が決めるか 

・  日時・場所の変更の可否について  

・  連絡方法    

 

(4) 子の引き渡しの方法

 

 (子どもが小さいときは)子の引き渡しの方法(どう送り届けるか)   

 

※ あまり厳密に取り決めても実際上不可能となることが多いので、実行できそうな範囲にとどめることが一般的です。

 

※ 間接強制が認められるためには、面会交流の頻度や長さ、方法等が特定されていることが必要、とされています。 

  

民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

1. 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

3. 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

4. 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。