相続分の指定(相続財産の全体について、一部の相続人又は相続人全員の「相続分割合を指定」する遺言)について。

□ 相続分の指定は一部の相続人に対してだけ指定することもできますが、その場合、指定を受けなかった相続人について、法定相続分とする趣旨か相続分をゼロとする趣旨なのか解釈の余地が生じます。遺言の趣旨の解釈に疑義が生じないよう、相続分の指定は全員に対し指定することをおすすめします

 

□ 相続分の指定をした場合、権利関係の確定には相続人全員による遺産分割協議が必要です。相続人間の遺産分割協議に困難が想定される場合は、遺産分割の方法を指定する遺言をおすすめします。

民法902条(遺言による相続分の指定)

1.被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

2.被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

1. 法定相続分と指定相続分

 

 相続人の相続分(相続分割合)は民法で定められており、この相続分割合(※)を 》「法定相続分」 といいます。

 ただし、遺言で、法定相続分と異なる相続分(相続分割合)を指定できます。法定相続分に対し、遺言で指定した相続分(相続分割合)のことを 「指定相続分」と呼びます。  

 

※相続分割合:特定の相続人に相続させる遺産の相続財産全体に対する分数的割合

 

2. 法定相続分と指定相続分の関係

 

 指定相続分は法定相続分と同じにしても変えても自由です。なお、指定相続分は法定相続分に優先します。 

 

3. 相続分の指定を行う相続人の範囲

 

 相続分の指定は一部の相続人に対してだけ指定することもできます。指定を受けなかった相続人は法定相続分となります。

 遺産分割にあたっては、先ず、相続財産全体から指定を受けなかった相続人の法定相続分に応じた相続財産を控除し、残りの相続財産を、遺言で指定した相続分に応じ分配します。

 

※ しかしながら、一部の相続人に対してだけ指定することは、指定を受けなかった相続人について、法定相続分とする趣旨か、はたまた、相続分をゼロとする趣旨かといった、遺言の趣旨の解釈をめぐる疑義が生じる恐れがあります。したがって、相続分の指定は相続人全員に対して行うことをおすすめします。 

 

4. 相続分の指定と遺産分割方法の指定

 

 相続分の指定の遺言は、権利関係の確定には、相続開始時に相続人全員による遺産分割協議が必要となります。

 したがって、相続分の指定の遺言は、相続人間で円滑な遺産分割協議が行われることが見込まれる場合に限ります。相続人間の遺産分割協議に困難が想定される場合は、遺産分割の方法を指定する遺言をおすすめします。


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