長男に農家を継がせる遺言文例

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

似顔絵

遺 言 書

 

  遺言者○○○○は、以下のとおり遺言する。

 

第1条 長男○○○○(昭和△△年△月△日生)に家業である農業を継がせるため、次の物件を相続させる。ただし、相続後10年以内に相続した農地を売却等の処分をする場合は、その利益を相続人で等分に分けるものとする。

 

(1) 土地              

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

(2) 建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル 

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

(3)農地

   所在    〇〇市〇〇

   地番    △△△番地

   地目    田

   面積    △△△.△△平方メートル

 

(4)農機具、農業用備品のすべて

 

第2条 その他前条記載の財産を除く私の有する一切の財産を、妻○○○○(昭和△△年△月△日生)、長男○○○○、長女○○○○ (昭和△△年△月△日生)、次女○○○○(昭和△△年△月△日生)に、法定相続分により相続させる。

 

第3条 長男○○○○は、第1条の財産を相続することの負担として、遺言者が相続開始時に負担する債務を全て支払うこと。また、妻○○○○の生存中はその生活費、医療費等を負担し、身辺の世話をすること。

 

付言

 長女○○○○、次女○○○○には、長男○○○○に家業の農業を継がせるための財産の分割について理解し、遺留分を放棄してくれることを望みます。そして、みんなで助け合って仲良く暮らして欲しい。幸せな人生でした。ありがとう。

 

 令和△△年△△月△△日

 

 

                       (遺言者住所)

  遺言者   ○○○○  印


ポイン ト ここが遺言(相続)のポイント

□ 農地の「包括遺贈」が相続人になされたときは農業委員会の許可は不要です。農地の「特定遺贈」が相続人に行われた場合については、平成24年に農地法施行規則が改正され、農業委員会の許可は不要となりました。 

 農地の「包括遺贈」が相続人以外になされたときは農業委員会の許可は不要です。農地の「特定遺贈」が相続人以外になされたときは、農業委員会の許可を停止条件とする停止条件付遺贈となります。相続人以外になされた農地の「特定遺贈」による農地の登記には、許可指令書(農業委員会の許可書)の添付が必要です。  

 

 農地法3条の許可申請は、受遺者と相続人全員とで共同申請する必要があります(または受遺者と遺言執行者とで申請することができる)。相続開始時に相続人の協力が得られないことが予想されるときは、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。 

 

□ 農業をするにはある程度の規模の農地面積がなければ生業として成り立ちません。主な遺産が農地など家業の事業基盤しかないときは、他の相続人に遺産分割を要求されると、代償金の手当てができない場合、後継者が事業を承継するのが難しくなります。 

 遺言で後継者に農地など家業の事業基盤を一括して譲り、他の相続人には代わりの物として遺留分に見合う程度の金銭その他の財産を相続させます。

 

□ 後継者として農地を相続したものが、数年で農地を転用したり売却すると、相続人間に争いが起こる恐れがあります。後継者が、農地を相続後短期間で売却等の処分をした場合について遺言で何らかの条件を付けておくことも検討します。

 

□ 農地が遺産分割のため売却されるのを防ぐため、遺言で遺産分割を禁止することができます。禁止することがができる期間は5年です。

 

□ 民法改正により、改正前は、「相続させる」旨の遺言による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていましたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。

 その結果、次のような問題が生ずる恐れがあります。 

① 不動産を事業承継者に単独で相続させる旨の遺言をしても、他の相続人が自分の法定相続分相当持分を先に登記し善意の第三者に売却してしまうと、事業承継者は第三者に対抗できなくなる。  

② 他の相続人の債権者が、事業承継者の登記が未了の間に、他の相続人の法定相続分相当持分に対し債権者代位によって登記を行い仮差押えを行ってしまうと、事業承継者は対抗できなくなる。 

 

 死因贈与契約は、所有権移転の仮登記をすることにより順位保全ができ、他の相続人がやその債権者が、事業承継者より先に登記を行うことを阻止することができます。 

 遺言代用信託(遺言の代用としてする信託契約)は、信託の登記をすることにより、他の相続人がやその債権者が、事業承継者より先に登記を行うことを阻止することができます。

 

□ 配偶者の生活に配慮しておきます。

 

□ 後継者が親所有の敷地に別棟で家を建てて住んでいる場合は、生前に敷地を分筆し、相続時精算課税制度を活用し贈与しておくことも検討します。

 

□ 被相続人が事業に使っていた土地を相続し、相続した人がそのまま事業を続けるときは、「小規模宅地等の特例」の利用で、土地の評価額が80%減額されます。(上限は事業用400㎡)

注意事 項  本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。

 あなたのご遺族のあいだに相続争いが起きにくい遺言書、ご遺族が相続手続きをしやすい遺言書、あなたの思いを実現する最適な遺言書の作成を当事務所がお手伝いいたします。


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