離婚協議書文章表現の注意点


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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 形成条項

 

 形成条項とは、「新たな権利の発生、変更、消滅の効果を生ずる合意をする」ことを内容とする条項です。

 「夫○○○○(以下「甲」という。)と妻○○○○(以下「乙」という。)は、離婚について協議した結果、協議離婚する。」と記載することにより、婚姻関係を消滅させる法律効果が生じます。

 

2.. 給付条項

 

 給付条項とは、「誰が、誰に対して、どのような給付をすべきなのか、あるいはすべきでないのか」とか、「誰が、誰に対して、いつまでに、いくらを支払うか」といった合意を内容とする条項です。  

 給付条項は、給付の対象物を特定する表現で記載する必要があります。

 不動産の場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)のとおりに表現し記載します。

 

※強制執行をするためには、きちんとした「債務名義」(強制執行することを許可した公文書=公正証書等)となっていなければなりません。

 

 3. 確認条項

 

 確認条項とは、「特定の権利もしくは法律関係の存在または不存在を双方で確認する」合意を内容とする条項です。 

 確認事項は、「甲と乙との間に、○○○○が存在することを確認する。」というように、対象を特定する表現で記載する必要があります。   

 

 

4. 道義条項

 

 道義条項とは、双方が道義的な責任を認め合い、今後の紛争を予防するための条項であり、強制執行することはできません。.

 道義条項は、給付条項と解釈されることのないよう、「約束する」などといった表現で記載します。 

 

5. 用語について

 

(1)「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」について

 

■ 「A及びB」は、AとBの両方という意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B及びC」と記載します。

 

■ 「A又はB」は、AかBのどちらかという意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B又はC」と記載します。

 

■ 大きなグループと小さなグループに分ける場合(一次分類と二次分類をする場合)は、大きなグループ分け(一次分類)に「並びに」を、小さなグループ分け(二次分類)には「及び」を使います。

 例えば、「A及びBの引き渡し並びにCの受領」のように用います。

 

■ 「又は」「若しくは」についても、大きなグループ分け(一次分類)に「若しくは」を、小さなグループ分け(二次分類)には「又は」を使います。 

 例えば、「A又はBの引き渡し若しくはCの受領」のように用います。 

 

(出典:淵邊善彦(2017)『契約書の見方・作り方』日本経済新聞出版社.46-50頁) 

 

(2)語尾の「〇〇する」と「〇〇するものとする」のちがい 

 

 作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇する」という表現にするのが一般的です。なお、この場合に「〇〇するものとする」とした場合は原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味が出てくるとされています。また、「〇〇するものとする」の文言は、強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。

 

 また、民法(任意規定)に反する定めをしようとする場合も、「〇〇するものとする」の文言を用いることがあります。

 

(3)語尾の「〇〇しない」と「〇〇しないものとする」のちがい

 

 不作為義務(何かをしないこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇しない」という表現にするのが一般的です。 なお、この場合に「〇〇しないものとする」とした場合は原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味が出てくるとされています。

 

 また、民法(任意規定)に反する定めをしようとする場合も、「〇〇しないものとする」の文言を用いることがあります。

 

(4)語尾の「〇〇をするものとする」と「〇〇をしなければならない」のちがい

 

 「〇〇をしなければならない」とすると表現として少しきつい感じがある場合、これをやわらげる表現として「〇〇をするものとする」が使われることがあります。

 また、「ものとする」を付けた方が語呂がいいことから使われることもあります。

 なお、「〇〇をするものとする」とした場合、原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味も出てくる場合があります。  

 

(5) 「直ちに」・「速やかに」・「遅滞なく」の順で時間的即時性の要求度が高い

「速やかに」は基本的に訓示的意味合いがあり、直ちに違法とまで評価されない場合が多い。「遅滞なく」は正当な理由に基づく遅れは許される。「直ちに」や「遅滞なく」とする規定に反した場合には、不当というだけでなく違法と評価される。

 

(6) 「漢字」と「ひらがな」

 

① 「法令における漢字使用等について」では、「副詞」については原則として漢字で書くものとされ、「接続詞」についてはひらがなで書くことになっています(ただし、「及び」、「並びに」、「又は」、「若しくは」については漢字で書くこととされている)。

 

➁ 「とき」と「時」

 法令用語としての「とき」は仮定的条件を示す言葉を表すときに用います。法令用語としての「時」は時点や時間を表すときに用います。

 

③ 「もの」と「者」

 法律上人格を有するものを表すときは「者」を用います。法律上人格を有しないもの(混在を含む)を表すときは「もの」を用います。

 

④ 「もの」と「物」

 有体物である物件を表すときは「物」を用います。有体物でないもの(混在を含む)を表すときは「もの」を用います。

 

 

((2)~(6)の参考文献:吉田利宏(2020)『新法令用語の常識』日本評論社.)

 

(7) 「が」と「の」~「乙『が』指定する口座に振込んで支払う」と「乙『の』指定する口座に振込んで支払う」の違い~

 

 格助詞「が」と「の」には、双方とも、『主格』『連体修飾格』の用法があります。『主格』とは、格助詞の付いた語が主語になるということを意味し、『連体修飾格』とは、格助詞のすぐうしろに名詞がつながり、格助詞の付いた語がその名詞を説明する、ということを意味します。

 例文の場合、 格助詞は「『主格』の用法として、「が」と「の」双方とも用いることができます。