1. あいまいな表現をしない
2. 誤字、脱字に注意する
3. 加除、訂正は決められた方法で行う
4. 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違いを踏まえて書く
5. 「遺言者の所有する一切の財産」と「遺言者の有する一切の財産」の違いに注意
6. 「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」と「(死亡)以前に」の違いに注意
7. 遺言書で強制執行をするためには「債務名義」となっていなければなりません
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. あいまいな表現をしないではっきりとわかりやすく書きます
物件、預貯金については、客観的に特定できるよう、あいまいな表現がないか注意し、解釈上疑義が生じないように気を付けましょう。
例えば、「家を相続させる」という表現では、土地と建物か、建物だけか分かりません。
■ 土地や建物は、マンションも含め、登記簿謄本(登記事項証明書)の通りに書きます。そうしないと相続登記に使えないということもあります。
(土地)
所在地
地番
地目
地積
(建物)
所在地
家屋番号
構造
床面積
※ 未登記のものは家屋番号の欄に「未登記」と書きます。(固定資産税課税台帳登録証明書の通りに書きます。)
※ 家財道具についても、建物の受遺者に帰属させる場合は、紛争予防のため、その旨明記します。
■ 預貯金は、金融機関名と支店名を記載し、「〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の定期預金全額」と書きます。
■ 株券は、「株式会社〇〇の株式〇〇株」と書きます。
2. 誤字、脱字に、特に注意しましょう
誤字、脱字を見つけたら正規のやり方で訂正します。そうしないと不動産登記に事実上使えなくなることがあります。
3. 余分なものは描かない
地図やイラストを描くのややめましょう。赤で斜線を引いたものが無効とされた判例もあります。
4. 訂正、加筆があるときは定められた方法で行います
□ 「加除、訂正の方法」について、詳しくは 》 自筆証書遺言の訂正(加除変更)の仕方 をご覧ください。
※ 「加除、訂正の方法」は、秘密証書遺言も同じです。
5. 数字は、変造を防ぐため漢数字が望ましいとされています
6. 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違いを踏まえて書く
遺言で「不動産を相続させる」と書けば、登記申請は単独ででき、また、登記をしなくても第三者に対抗できると解されています。
これに対し、遺言で「不動産を遺贈する」と書くと、登記をしなければ第三者に対抗できません。また、登記は、包括遺贈の場合を含めて、相続人全員(または遺言執行者)と共同ですることが必要です。(法定相続人にあげる場合でも、「遺贈する」と書くと他の相続人(または遺言執行者)との共同申請が必要です。)
民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、「相続させる」遺言による不動産の相続についても、法定相続分を超える部分については登記をしなければ債務者・第三者に対抗できないこととなります。
7. 「遺言者の所有する一切の財産」と「遺言者の有する一切の財産」の違いを踏まえて書く
「所有する」に債務は含まれないとの疑義が生じる恐れがあります。
8. 「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」と「(死亡)以前に」の違いを踏まえて書く
「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」とすると、遺言者と受遺者が同時に死亡すると、停止条件の不成就により、遺贈の効果が生じないことになってしまうので・・・「(死亡)以前に」という文言を用いる(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁)
9. 遺言書で強制執行をするためには、きちんとした「債務名義」(強制執行することを許可した公文書)となっていなければなりません
(1) 給付文言で記載する
① 「遺贈する」「相続させる」というような表現で記載する必要があります。
「遺贈することとする」「相続させることとする」といった表現は強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。
② 遺言書に、作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする事項を記載する場合は「〇〇する」という表現にします。不作為義務(何かをしないこと)を内容とする事項の場合は「〇〇をしない」という表現で記載する必要があります。
「〇〇をするものとする」「〇〇をしないものとする」といった表現は強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。
(2) 給付内容を明確に表現し記載する
遺言書には、誰が、誰に対して、どのようか給付をすべきなのか、あるいはすべきでないのかを明確に表現し記載する必要があります。
(3) 給付の対象物を特定する表現で記載する
遺言書には、給付の対象物を特定する表現で記載する必要があります。不動産の場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)のとおりに表現し記載する必要があります。
(4) 形成条項
形成条項とは、新たな権利の発生、変更、消滅の効果を生じさせることを内容とする条項です。