遺言作成のポイント(5)~文章上注意すべきこと~

1. 誤字、脱字に注意する

2. 「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」と「(死亡)以前に」の違い

3. 「所有する一切の財産」と「有する一切の財産」の違い

4. 「相続させる」と「遺贈する」


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント 関連情報 

 

1. 「以前」「以後」「以降」「以上」「以下」いずれもその数字の起点を含みます

 

 「以」には、「そこを起点として」という意味があります。 

 

(1)「以前に」「以後に」「より前に」「より後に」の違い

 

 基準点(令和3年4月1日)を含むときは、「令和3年4月1日『以前』に」又は「令和3年4月1日『以後』に」と表記し、

 基準点(令和3年4月1日)を含まないときは、「令和3年3月31日より『前』に」又は「令和3年4月2日より『後』に」と表記します。

 

「令和3年4月1日以前に」は令和3年4月1日を含みますが、 「令和3年4月1日より前に」は令和3年4月1日は含まれません。 

「令和3年4月1日以後に」は令和3年4月1日を含みますが、 「令和3年4月1日より後に」は令和3年4月1日は含まれません。

 

(2)「遺言者の死亡『より前』に受遺者が死亡したときは」と「死亡『以前』に受遺者が死亡したときは」の違い  

 

 「死亡以前に」は、死亡時を含みますが、 「死亡より前に」は、死亡時を含みません。「死亡より前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合は、停止条件の不成就により、遺贈の効果が生じないことになります。

 「死亡以前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合についても停止条件は成就し、遺贈の効果が生じます。   

 

(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁) 

 

2. 「相続させる」と「遺贈する」

 

 法定相続人に財産をあげる場合は「相続させる」と書き、法定相続人以外に財産をあげる場合は「遺贈する」と書きます。

 なお、法定相続人以外に財産をあげる場合に「相続させる」と書いた場合も、「遺贈する」と置き換えて捉えることとなります。 

 相続の効力は生じないが、遺贈の効力が生じる(平成3年最判)。

 

(出典:『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』23頁)

 

□ 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違いについては 》》相

 

「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言) をご覧ください。  

 

(「与える」「譲る」「相続させる」「遺贈する」)

 

 財産を「与える」「譲る」は、多くの場合、「相続させる」と解することができますが、「遺贈する」は、例え相続人が受取人であっても、判例では遺贈としか解釈できないとされています。

 

 財産を譲る場合、相続人に対しては「相続させる」と表現し、それ以外に対するものは「遺贈する」とすることをおすすめします。 

 

 

 なお、疑義が生じないよう「与える」「譲る」もなるべく使わないようにしましょう。   

 

3. 「所有する一切の財産」と「有する一切の財産」の違い

 

 「遺言者の所有する財産」は、形式的には遺言者の有する、所有権の対象となるプラスの財産のみを指すこととなり、適切でありません。(参照:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.64頁)

 

 

 

 単に、「所有する財産を相続させる」と表記した場合は、特定遺贈と解釈される余地があります。(特定遺贈には債務は含まれません)

 

「有する一切の財産」は、包括遺贈であることを明確にした表現です。 

 

(相続開始時に有する一切の財産)

 

  「相続開始時に有する」の文言は、遺言作成後に取得する財産も含むことを明確にした表現です。(全財産を相続させる遺言又は包括遺贈)

 ただし、「相続開始時に有する」の文言は、なくても解釈上問題はありません。    

 

4.  助詞「の」の使い方に注意

 

 助詞の「の」は働きには複数の種類があります。異なる解釈が可能であることから、解釈の余地のない、一義的で明解な言い回しをしましょう。

 

「配偶者(妻)に法定相続分を相続させる場合」

 

 ✖  「妻○○○○に法定相続分の2分の1を相続させる」

 〇 「妻○○○○に法定相続分を相続させる」

 

 〇 「妻○○○○に2分の1を相続させる」

 

「配偶者(妻)に法定相続分の半分を相続させる場合」

 

 ✖  「妻○○○○に法定相続分の2分の1を相続させる」

 

 〇 「妻○○○○に4分の1を相続させる」 

 

5.  「~と~との「~との違い

 

 並列助詞の「と」の繰り返しについては省略されることが一般的ですが、入れることにより何らかの効果がある場合もあります。 

 

6. 「もの」と「者」 

 

 一般的に、法律上の人格を有するもの(自然人及び法人)を指す場合は「者」が用いられます。

 

 「もの」は、

①「者」又は「物」にあたらない抽象的なものを指す場合、

②あるものにさらに要件を加えて限定する場合、

③ある行為の主体として、人格のない社団又は財団を指す場合、あるいは、これらと個人・法人とを合わせて指す場合で用いられます。 

 

 

7. 財産の価格を表す数字

 

 改ざんの恐れがあるときは、漢数字(大字(だいじ))をおすすめします。 

 

8. 金○○○○万円の円の次の「也」

 

 円の次に「也」という文字を付け加えるのは、円の次に「○○銭」と付け加えられて金額が偽造されるのを防ぐためでしたが、そのおそれがないときは不要です。(なお、つけても問題ない。) 

 

9. 句読点の打ち方  (読点の位置によって文章の意味が変わることがある)

 

  読点は文章を読みやすくするために打つものなので、過度に神経質になる必要はありません。

 しかし、遺言の場合、読点(「、」)が無いことによって、複数の意味に解釈できる場合があります。また、読点を打つ位置によって意味が変わることがあります。 誤読を避けるために必要な場合は、必ず読点をうちましょう。  

 

➀ 遺言の場合、主語を明確にするために打ちます。

 また、「長い主語」「長い修飾語」のあとには、関係を明確にするために読点を打ちます。(関係が明確であれば特に読点を打つ必要はない)

 

② 節と節の間に読点を打ちます。(「重文」の区切り、「複文」の区切りに読点を打つ)

 

■「重文」とは、単文(主語と述語のある文)を2つ以上並列させ、結びつけた文章のことです。 

(例)妻に4分の3を相続させ、長男に4分の1 を相続させる。   

■「複文」とは、単文の基本となる主語と述語のほかに、修飾語(修飾部)があり、修飾部の中にも主語と述語の文節が含まれている文章のことです。 

 (例)遺言者は、前条項に記載したもの以外に相続財産が見つかったときは、それらを全て妻に相続させる。

 

 また、複文の場合、修飾語・修飾部がどこにかかるか分かり難く、意味が誤解される恐れがあるときは、修飾関係を明確にするため読点を打ちます。

 

 前置きの節や語句、挿入された節や語句を区切るため読点を打ちます。

 

③ 語句や名詞を並べる場合や、漢字やひらがなが連続する場合は、読みやすくするため読点を打ちます。(中点(「・」)を使うこともあります)

 

④ 逆接の関係や原因と結果の関係を述べる場合は、関係性を明確にするため読点を打ちます。

 

⑤ 接続詞の前又は後には、ケースバイケースで、読みやすいよう読点を打ちます。 

 

■ 接続詞の直前が、名詞ではなく動詞の場合は、接続詞の前に読点を打ちます。

 

⑥ かぎ括弧の前後には読点を打たなくてよいとされています。 

 

10 誤字、脱字に、特に注意

 

 誤字、脱字を見つけたら正規のやり方で訂正しましょう。そうしないと不動産登記に事実上使えなくなることがあります。  

 


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