遺言の文章表現の注意点

1. 誤字、脱字に注意する

2. 「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」と「(死亡)以前に」の違い

3. 「所有する一切の財産」と「有する一切の財産」の違い

4. 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違い


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 「遺言者の死亡より前に受遺者が死亡したときは」と「死亡以前に」の違い 。 

 

 「死亡以前に」は、死亡時を含みますが、 「死亡より前に」は、死亡時を含みません。 

 「死亡より前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合は、停止条件の不成就により、遺贈の効果が生じないことになります。

 「死亡以前に」では、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合についても停止条件は成就し、遺贈の効果が生じます。   

(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.164頁) 

 

2. 令和2年4月1日「以後に」と「和2年4月1日「より後に」の違い

 

「令和2年4月1日以後に」は令和2年4月1日を含みますが、 「令和2年4月1日より後に」は令和2年4月1日を含みません。

 

3. 「所有する一切の財産」と「有する一切の財産」の違い

 

 「遺言者の所有する財産」は、形式的には遺言者の有する、所有権の対象となるプラスの財産のみを指すこととなり、適切でありません。(参照:日本公証人連合会(2017)『 新版 証書の作成と文例 遺言編[改訂版]』立花書房.64頁)

 

  「所有する一切の財産」は、包括遺贈であることを明確にした表現です。 単に、「所有する財産を相続させる」と表記すると特定遺贈と解釈される余地があります。(特定遺贈は債務は含まれない。)

 

4. 「相続開始時に有する」一切の財産

 

 「相続開始時に有する」は、遺言作成後に取得する財産も含むことを明確にした表現です。 

 

5. 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違い

 

 「相続させる」と「遺贈する」との法的効果の違いについては 》 相続させる遺言の注意点 をご覧ください。  

 

6. 「与える」「譲る」と「相続させる」「遺贈する」

 

 財産を「与える」「譲る」は、多くの場合、「相続させる」と解することができますが、「遺贈する」は、例え相続人が受取人であっても、判例では遺贈としか解釈できないとされています。

 

 財産を譲る場合、相続人に対しては「相続させる」と表現し、それ以外に対するものは「遺贈する」とします。 

 

 疑義が生じないよう「与える」「譲る」もなるべく使わないようにしましょう。   

 

7. 語尾の「〇〇する」と「〇〇するものとする」のちがい 

 

 作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇する」という表現にするのが一般的です。なお、この場合に「〇〇するものとする」とした場合は原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味が出てくるとされています。また、「〇〇するものとする」の文言は、強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。

 

 民法(任意規定)に反する定めをしようとする場合も、「〇〇するものとする」の文言を用います。

 

  語尾の「〇〇しない」と「〇〇しないものとする」のちがい

 

 不作為義務(何かをしないこと)を内容とする合意を定める場合は「〇〇しない」という表現にするのが一般的です。 なお、この場合に「〇〇しないものとする」とした場合は原則を定めたものと解釈され、合理的な理由があればしなくても良いという意味が出てくるとされています。 

 

12. 「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」について

 

■ 「A及びB」は、AとBの両方という意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B及びC」と記載します。

 

■ 「A又はB」は、AかBのどちらかという意味です。3つ以上のものについて並列で規定する場合は、「A、B又はC」と記載します。

 

■ 大きなグループと小さなグループに分ける場合(一次分類と二次分類をする場合)は、大きなグループ分け(一次分類)に「並びに」を、小さなグループ分け(二次分類)には「及び」を使います。

 例えば、「A及びBの引き渡し並びにCの受領」のように用います。

 

■ 「又は」「若しくは」についても、大きなグループ分け(一次分類)に「若しくは」を、小さなグループ分け(二次分類)には「又は」を使います。 

 例えば、「A又はBの引き渡し若しくはCの受領」のように用います。 

 

 

(出典:淵邊善彦(2017)『契約書の見方・作り方』日本経済新聞出版社.46-50頁) 

 

8.  「~『と』~の」と「~『と』~『と』の」の違い

 

 並列助詞の「と」の繰り返しについては省略されることが一般的ですが、入れることにより何らかの効果がある場合もあります。 

 

9.  助詞「の」の使い方に注意

 

 助詞の「の」は働きには複数の種類があります。異なる解釈が可能であることから、解釈の余地のない、一義的で明解な言い回しをしましょう。

 

 ✖  妻○○○○に法定相続分の2分の1を相続させる

 〇 「妻○○○○に法定相続分を相続させる」

 〇「妻○○○○に2分の1を相続させる」(「妻○○○○に4分の1を相続させる」)

 

10. 財産の価格を表す数字

 

 改ざんの恐れがあるときは、漢数字(大字(だいじ))をおすすめします。 

 

11. 金○○○○万円の円の次の「也」

 

 円の次に「也」という文字を付け加えるのは、円の次に「○○銭」と付け加えられて金額が偽造されるのを防ぐためでしたが、そのおそれがないときは不要です。(なお、つけても問題ありません) 

 

12. 読点(「、」)の打ち方

 

  読点は文章を読みやすくするために打つものなので、遺言の場合、過度に神経質になる必要はありません。

 しかし、読点が無いと複数の意味に解釈できるできる場合があります。誤読を避けるために必要な場合は必ず読点をうちましょう。

 また、読点を入れる場所で意味が違ってくる場合もありますので、注意が必要です。

 

 

 「長い主語」「長い述語」「長い修飾語」のあとには読点(「、」)を打ちます。

 

 語句や名詞を並べる場合や、漢字やひらがなが連続する場合は、読みやすくするため読点を打ちます。(中点(「・」)を使うこともあります)

 

「重文」「複文」の区切りに読点を打ちます。

 

 単文を2つ以上並列させ、結びつけた文が重文です。文中に修飾語・修飾部があり、その中に述語の含まれる文が複文です。

 

 複文の場合、修飾語・修飾部がどこにかかるか分かり難く、意味が誤解される恐れがあるときは、修飾関係を明確にするため読点を打ちます。 (読点の位置によって文章の意味が変わることがあります。)

 

 逆接の関係や原因と結果の関係を述べる場合は、関係性を明確にするため読点を打ちます。

 

 接続詞、副詞のあとに、読みやすいよう読点を打ちます。(ケースバイケース) 

 

 かぎ括弧の前後には読点を打たないでよいとされています。 

 

13. 誤字、脱字に、特に注意

 

 安部元首相が「退位礼正殿の儀」で「天皇、皇后陛下には末永くお健やかであらせられますことを願って已みません」を「末永くお健やかであらせられますことを願っていません」と「已みません」を間違って読んでしまった、というニュースがありました。これでは意味が全く反対になってしまいますね。 

 誤字、脱字を見つけたら正規のやり方で訂正します。そうしないと不動産登記に事実上使えなくなることがあります。  

 

 

23. 「加除、訂正の方法」については 》 自筆証書遺言の訂正(加除変更)の仕方 をご覧ください。

 


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