□ 遺言の撤回は遺言の方式によって行う必要があります。
新たに遺言書を書いて、旧い遺言は撤回する旨明記するのが、最もわかりやすく紛争の起きにくい方法です。
□ 遺言の撤回の撤回 第1の遺言を撤回した第2の遺言を更に撤回しても、第1の遺言は復活しません。遺言を復活させたいときは、改めて同じ内容の遺言をする必要があります。
□ 自筆証書遺言及び秘密証書遺言は、燃やしてしまえば撤回したものとして扱われます。(公正証書遺言は燃やしてもダメです)
□ 遺言であげた不動産等を売ってしまった場合、その遺贈は撤回したものとして扱われます。
□ 「妻〇〇に〇〇を相続させる」と遺言した後に離婚した場合は、この遺言は撤回されたものと解されます。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 遺言の撤回
遺言の撤回・変更は、原則として自由にできます。遺言者はいつでも遺言の全部又は一部を撤回・変更することができます。
遺言の撤回・変更は、遺言の方式に拠らなければなりません。(前の遺言の方式でなくてもよいとされている。)
新たに遺言書を書いて、旧い遺言は撤回する旨明記するのが、最もわかりやすく紛争の起きにくい方法です。
遺言者は、撤回権を放棄することはできません。
民法第1022条(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(撤回の撤回)
第1の遺言を撤回する第2の遺言を、第3の遺言で撤回しても第1の遺言は復活しません。撤回が繰り返されると、遺言者の意思がさらに明確でなくなり、それを巡る紛争が生じやすい等の理由からです。
遺言を復活させたいときは、改めて同じ内容の遺言をする必要があります。
2. 遺言を撤回したとみなされる場合(法定撤回 )
(1) 遺言に抵触するような生前行為等をした
遺言で財産承継の方法を指示した場合であっても、その後、その遺言内容と異なる生前処分を行うことは自由です。
遺言者が遺言に抵触するような生前行為等をした場合は、生前処分と抵触する部分は、遺言を撤回したことになります。
① 遺言者が、故意に、遺言書又は目的物を破棄した
遺言者が、故意に、遺言書又は目的物を破棄した場合は、遺言を撤回したことになります。破棄した部分のみが撤回されたことになります。
民法第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
② 遺言者が目的物を売却した
遺言者が目的物を売却した場合は、遺言は撤回されたことになります。 売却した部分のみが撤回されたことになります。
(2) 前の遺言と後の遺言との抵触等
民法第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
「妻〇〇に〇〇を相続させる」と遺言した後に離婚した場合、この遺言は撤回されたものと解されます。
3. 遺族による遺言の取り消し
遺言が詐欺や強迫によりなされたときは取り消すことができます。遺言者の死亡後は相続人も取り消すことができます。
取り消された場合、遺言の効力は失われます。
詐欺や強迫によりなされた遺言の取り消しは、詐欺・強迫の立証が必要です。
遺言が詐欺や強迫によりなされたときは、遺言者は、撤回の遺言をすれば取り消しと同じ効果を得ることができます。ただし、撤回の遺言は認知症等で遺言能力を失ってしまったらできません。