付言(ふげん)事項の書き方

□ 遺言書に書いて強制力、即ち法的拘束力があるもの(法定遺言事項)は民法等の法律で限定されており、それ以外は付言事項であり、法的な効力、拘束力はありません。

 

□ 付言事項は、一般に、法定遺言事項を記載した巻末に、表題を付言事項、付言、付記事項等とし、記載します。遺言条項と合わせて一緒に記載することもできます。その場合、本文の趣旨を不明確にすることのないよう注意を要します。

 

□ 付言事項には、遺言内容について相続人の理解を得る効果が期待できます。

 

□ 付言事項には中傷、非難、人格攻撃を書いてはいけません。

 

□ 公正証書遺言では、家族に伝える自筆のメッセージを、「付言事項」として、別紙で付けることができます。これは、公正証書の一部になります。

 


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 付言事項とは

 

 遺言書に書いて強制力、即ち法的拘束力があるもの(法定遺言事項)は民法等の法律で限定されており、それ以外は付言事項です。

 付言事項の内容については、法律上、特に制限はありません。 

 付言事項は法的な効力、拘束力はありませんが、家族や関係者が付言事項を尊重することは何ら問題ありません。

 遺言で相続の割合を法定相続分と違う割合にするときや遺留分を侵害する場合、その理由を述べることにより、誤解によるわだかまりを残さない効果が期待できます。あるいは寄与分をあげたい人がいる場合、その理由を述べることにより、相続人の理解を得る効果が期待できます。

 

2. 付言事項の書き方

 

(1)付言事項を記載する位置

 

 付言事項は、一般に、法定遺言事項を記載した巻末に、表題を付言事項、付言、付記事項等とし、記載します。遺言条項と合わせて一緒に記載することもできます。その場合、本文の趣旨を不明確にすることのないよう注意を要します。 

 

(2)オススメの付言事項

 

① 遺言を書いた理由(わけ)  

 遺族の心情に配慮し、付言事項を積極的に使って遺言を書いた理由(わけ)や自分が亡くなった後の希望などを述べ、誤解によるわだかまりを残さないようにしておきたいものです。 

 

② 家族に対する感謝の言葉  

 付言事項は、家族に伝える愛のメッセージと言えます。

 

③ 相続の割合を法定相続分と違えた場合は、その理由 

 どうして相続の割合をこうしたのか、遺言者の考えが分かると、家族は受け入れやすくなることが多いと思います。

 遺言本文を見て憤慨した人も付言事項を読み理由が分かれば冷静を取り戻しわだかまりがなくなります。多く貰い気まずい思いをしていた人は気が楽になることでしょう。 

 

 自筆証書遺言の場合、他の相続人に相続手続きで一定の協力をお願いしなければならない場面も想定されます(因みに、検認の申立には相続人全員の戸籍謄本が必要です)。付言事項で、不利な遺言をした理由を述べ、不利な遺言をされた相続人の心情に配慮しておくことは、円滑な相続につながることが期待できます。

 

④ 遺言書に遺留分減殺請求をしないこと」と書いた場合は、その理由

 遺留分を侵害する遺言といえども、相続人が遺留分侵害額請求権を行使することができるようになるだけで、遺言がすべて無効になるわけではありません。法定の期間内に遺留分減殺の意思表示がなければ、遺留分を侵害する遺言も記載通りの効力を有します。

 遺留分さえももらえなかった相続人も、理由が分かれば納得して遺言を受け入れてくれることでしょう。

 

⑤ 相続人にたいする生前贈与、特別受益の存在  

 寄与分、特別受益の存否に関する争いは、相続トラブルワースト10です。付言事項により、生前贈与・特別受益の有無を巡る相続人間の争いを未然に防ぐことが期待できます。

 

⑥ 「特別受益の持ち戻しの免除」の遺言(遺産分割にあたり、特別受益を加味しないことを望むは、その理由等 

 付言事項に、生前贈与をした事情を書き加えることで、利害の反する相続人も納得し、円満な相続につながることが期待できます。 

 

⑦ 「子の認知」、相続人以外への「遺贈」 

 付言事項に、「子の認知」や相続人以外への「遺贈」の事情・理由を書き加えることで、利害の反する相続人も納得し、円満な相続につながることが期待できます。

 

⑧ 「相続人の廃除」、「遺産分割の禁止」 

 付言事項に「相続人の廃除」や「遺産分割の禁止」の理由を書き加えることで、相続時の混乱を防ぐことがが期待できます。

 

⑨ 寄与分の希望がある場合その理由  

 寄与分、特別受益の存否に関する争いは、相続トラブルワースト10に入っています。

 ただし、遺言に寄与分ないし寄与の事情を書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はありません。相続人同士の協議における判断材料にとどまります。また、遺留分減殺請求権の行使を制限する法的効果は生じません。

 

 民法改正により「特別の寄与」制度が設けられ、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになりました。しかし、特別寄与料を遺産分割協議で申し出るのは心理的な負担も考えられ、また、認められるかどうかも不確実です。

 確実に財産をあげたいのであれば、遺言で寄与分を考慮した遺贈をすることをおすすめします。

 

 

3. 書いてはいけない、注意を要する付言事項

 

ア、 本文の内容に抵触すること、本文の解釈を混乱させること

 

⓵ 遺言に条件が付されていると受けとられかねないような表現  

 遺言に条件が付されていると受けとられかねないような表現は、相続人の間に誤解や混乱を招く恐れがあります。 

 

② 相続人から廃除すると受けとられかねないような表現  

 相続人から廃除すると受けとられかねないような表現は、誤解を招く恐れがありますので避けましょう。ちなみに、相続人廃除は遺言事項です。

 

イ、 相続人に対する中傷、非難、人格攻撃 

 

 相続人に対する中傷、非難、人格攻撃は、いたずらに相続問題を複雑にするだけです。また、誤解によるものだったり、的外れなものだった場合でも、相手が言い訳も反論もできないような方法はフェアでありません。無念の傷跡を残してしまいます。

 

ウ、 介護に関すること、尊厳死、臓器提供、葬儀についての希望、散骨やお墓に関すること

 

① 介護に関すること、尊厳死に関すること、「臓器提供」に関すること

 介護に関すること、尊厳死に関すること、「臓器提供」に関することは、生前に知らせておかないと実現は困難です。 

 介護に関することは「任意後見契約公正証書」、尊厳死については「尊厳死宣言公正証書」、臓器提供については「臓器提供に関する公正証書」の形で決めておくことができます。 

 

※ 平成21年の臓器移植法改正により、本人の意思が不明の場合でも、遺族の承諾により臓器移植できることになりました。

 

② 葬儀についての希望、散骨やお墓に関すること

 

 葬儀についての希望、散骨やお墓に関することを遺言書に書いておきたい事情がある場合は、》エンディングノート にも書いておくことをおすすめします。

 

 葬儀の方法や散骨、お墓に関する希望は、必ず実行することを遺贈又は相続させる遺言の負担と位置づけることによって、相続人らを法的に拘束することが可能となる(出典:NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.254頁) 

 

※ ただし、遺贈の場合、受遺者は遺贈を拒否し負担を実行しないことができます。確実に実行してもらうためには、負担付死因贈与契約を結んでおくことが必要です。ほかに信託契約による方法があります。 

 


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