相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)

□ 民法改正により、改正前は、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなった。 

 

□ 民法改正により、改正前は、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)について、遺言執行者には相続登記を申請する代理権限はないとされていたが、改正後は、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)についても、遺言執行者は相続登記の申請権限があると変更された。

□ 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がされた場合には、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限を有します。 


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1. 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言) 

 

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)とは、特定の相続人に対し、特定の相続財産を相続させる遺言のことをいいます。 

 

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、遺贈であるといえるような事情の無い限り、原則として遺産分割方法の指定であると解されています。

 

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできません。遺言の効力発生時(通常は相続開始時)に、その遺言どおりに特定の財産が特定の相続人に承継されると解されています。その結果、特定財産の承継を受けた相続人は、その財産が不動産であれば、単独で所有権移転登記ができます。

 

民法1014条2項(特定財産に関する遺言の執行)

 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

 

 

2. 民法改正により、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)による不動産の贈与については登記をしなくても第三者に対抗できるとされていたものが改められ、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととされた (民法899条の2)

 

 民法改正前は、遺言によって不動産の承継を受けた特定の相続人は、登記なくして第三者に対抗できると解されていました。

 しかし、登記がされていないにもかかわらず、法定相続分以外についても第三者に対抗できるのでは、登記による公示を信頼して取引をした第三者に不利益をもたらすおそれがあり、取引の安全を害する恐れがあります。

 そこで、民法改正により、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)によってよって不動産の承継を受けた場合は、承継した相続人は、その法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないものとされました。

 ただし、これは、2019年(令和元年)7月1日以降に開始した相続について適用され、これより前に開始していた相続については、従前どおり、対抗要件を備えなくても、承継した相続分の全部を第三者に対抗できます。

 

(法改正前に作成した遺言による相続であっても、改正法施行後の相続には適用される。)

 

 登記は相続人全員で共同申請します。ただし、遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者は単独で相続による権利の移転登記の申請をすることができます。

 

(参考)民法改正前は、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、被相続人の死亡と同時に当該遺産全てについて、権利を移転させる効力を有するとされていた

 

 相続人に対し、財産を承継させる方法として、遺贈、相続分の指定、遺産分割方法の指定があるが、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、最高裁平成3.4.19判決(*)により、「遺産分割方法の指定」がなされたものと解すべきであるとされ、遺産分割協議を経ることなく、被相続人の死亡と同時に、当該遺産についての権利を移転させる効力を有するとされていた。  

 

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、・・・、当該遺産を当該相続人をして他の相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものであると解すべきであり、・・・、遺産分割の方法が指定されたものと解するのが相当・・・(最高裁平成3.4.19判決)  

 

(出典;小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 -』日本加除出版.154・155頁)

 

3. 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)をするときの注意点

 

 民法改正前は、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていましたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。

 その結果、次のような問題が生ずる恐れがあります。

 

① 不動産を事業承継者に単独で相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)をしても、他の相続人が自分の法定相続分相当持分を先に登記し、善意の第三者に売却してしまうと、事業承継者は第三者に対抗できなくなる。 

 

② 他の相続人の債権者が、事業承継者の登記が未了の間に、他の相続人の法定相続分相当持分に対し債権者代位によって登記を行い仮差押えを行ってしまうと、事業承継者は対抗できなくなる。 

 

 (以上の問題の解決策)

 

① 死因贈与契約は、所有権移転の仮登記をすることにより順位保全ができ、他の相続人がやその債権者が、事業承継者より先に登記を行うことを阻止することができます。 

 

② 遺言代用信託(遺言の代用としてする信託契約)は、信託の登記をすることにより、他の相続人がやその債権者が、事業承継者より先に登記を行うことを阻止することができます。

 

③ 付言事項を書く

 

4. 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)あれこれ  

 

(1) 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)に伴う登記は遺言執行者もできるか?

 

 民法改正(2018.7.13公布、令和元年7月1日施行)前は、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、被相続人の死亡と同時に当該不動産上の権利を当然に当該相続人に承継させることから、遺言執行の余地はなく、遺言執行者が指定されていても相続登記を申請する代理権限はないとされていました。 

 しかし、民法改正により、遺産分割方法の指定がされた場合の対抗要件を備える行為も遺言執行者ができるとされ、相続させる旨の遺言がされた場合には、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限を有することとされました。

(令和元年7月1日施行。令和元年7月1日以降に開始した相続について適用されます)

 

(2)相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)で負担を不履行のとき

 

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)で負担を不履行のときは、負担の不履行については、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)も「遺贈」の規定を準用し、裁判所に取り消しの請求ができるとされています。相続人は一人で請求できます。 

 

(3)相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)と代襲相続について

 

 遺贈は、民法994条で、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力は生じないとされていることから、代襲相続はできません。

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)も「遺贈する遺言」と同じく、遺言者の死亡以前に相続させるべき者が死亡したときは、その効力は生じないとされています。代襲者に相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、代襲相続はできません。財産は相続財産となり、相続人に帰属します。 

 つまり、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)で代襲者に相続させる旨の意思表示をすれば代襲相続させることができることになります。 

 

(4)相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)と借地権・借家権、農地

 

 対象財産が借地権・借家権の場合、「遺贈」は権利の移転に貸主の承諾が必要です。一方、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)はこれを要しないと考えられています。

 

 農地の場合、「遺贈」は、権利の取得に農業委員会(又は、都道府県知事)の許可が必要ですが、平成24年から、相続人に対する特定遺贈の場合は不要となりました。 

 注意事 項  民法改正(2018.7.13公布)

 

(1) 相続の効力等に関する見直し  

 「相続させる」遺言による不動産については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていたものを改め、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ第三者に対抗できないこととしました。

 改正の理由は、遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保するため、法定相続分を超える部分については登記をしなければ債務者及び善意の第三者に対抗できないとしたものです。

 

 民法第1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)

1. 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

2. 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

3. 前2項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。 

 

(令和元年7月1日施行。令和元年7月1日以降に開始した相続について適用されます) 

 

 法改正前に作成した遺言による相続であっても、改正法施行後の相続には適用されます。

 

(2)遺言執行者の権限の明確化等

 

① 遺言執行者を「相続人の代理とみなす」規定が削除され、遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、「相続人に対して直接その効力を生ずる」とされました。

 遺言執行者は遺言者の意思を実現するため、場合によっては相続人の利益に反することを行う必要があることから、このような改正がなされたものです。 

② 遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができる旨の判例の明確化がなされました。共同相続人は遺贈の履行義務を負わない。 

③ 遺産分割方法の指定がされた場合の対抗要件を備える行為も遺言執行者ができるとされ、「相続させる遺言」がされた場合には(遺贈には適用されません)、遺言執行者は、原則として、単独で相続による権利の移転登記の申請をする権限や、預貯金の払戻しをする権限(預貯金以外の金融商品は適用されない(遺言で権限を付与した場合を除く))を有します。 

④ 復任権について「やむを得ない事由」が削除された。 


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