特別受益(生前贈与)があるときの遺言の書き方

□  「特別受益(生前贈与)」については、相続人の間でも、誰が何を生前贈与されたのか分からないことがあります。遺産分割時に特別受益(生前贈与)を特別受益者の相続分から差し引いて欲しくないときは、遺言で、「特別受益の持ち戻しを免除する」と書く必要があります。これによって、特別受益(生前贈与)を遺留分に反しない範囲内において不問にすることができます。

 

□ 逆に、遺産分割時に特別受益(生前贈与)を特別受益者の相続分から必ず控除して欲しいときは、遺言で特別受益(生前贈与)を相続財産に加えることを明記する必要があります。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 特別受益と特別受益持ち戻しの意味

 

 「特別受益」とは、一部の相続人が受けた「生前贈与」や遺言による遺贈などの利益をいいます。

 

 「特別受益の持ち戻し」とは、遺産分割にあたって、相続人が受けた生前贈与や遺言による遺贈を、遺産分割の計算の基となる相続財産に加えることです。

 「特別受益の持ち戻し」によって、生前贈与をもらった相続人や遺言による遺贈をもらった相続人の遺産分割による取り分は減少します。 

 

ポイント 特別受益について詳しくは 》 特別受益 をご覧ください。

 

 

2. 特別受益の持ち戻しの方法

 

① 遺言

 遺言により、特別受益の持ち戻し(相続人が受けた生前贈与を遺産分割の計算の基となる相続財産に加えること)の指示をし、生前贈与を与えた相続人の取り分を減らすことができます。

 

 ② 遺産分割協議

 遺産分割協議により、特別受益の持ち戻しをし、生前贈与をもらった相続人の取り分を減らすことができます。 

 遺産分割を法定相続分を基準として行う場合(これが原則です)、高額な生前贈与や遺贈を受けた人がいる場合は、その人の取り分を特別受益額の分だけ減らすことができます。 

 生前贈与をどこまで特別受益と判断するかは、遺産分割協議の中で、相続人全員の合意で決めることができます。

 特別受益の存在は、あると主張する相続人が立証しなければなりません。 

 特別受益の持ち戻しは、遺産分割協議が終わった後で申し出ることは、原則できません。

 

 注意事 項 民法改正(30.7.13公布)により、これまでは、夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与や遺贈については、相続の時にこれも遺産に加えて相続分を計算する必要がありましたが、これからは、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における居住用不動産の生前贈与や遺贈は、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよい(特別受益の持ち戻しをしない)ことになりました。(生前贈与は令和元年7月1日以降におこなわれたものについて適用されます。遺贈は遺言書の作成日付が令和元年7月1日以降のものについて適用されます。) 

 

 

3. 特別受益の持ち戻しを免除してあげる方法

 

 遺言や遺産分割協議によって、特別受益の持ち戻しを免除してあげることができます。 

 

① 遺言で特別受益の持ち戻し免除(遺産に加えないこと)の指示をしておく方法 

 

 被相続人が、遺言特別受益の持ち戻しを免除する意思表示(生前贈与などを遺産に加えないことの指示)をしていたときは、相続時、遺産分割にあたっては、遺留分に反しない限り、特別受益の持ち戻しはしません。

 

※ 被相続人による特別受益の持ち戻し免除の意思表示は、口頭や黙示での意思表示も有効とされますが、相続人間で紛議にならないよう、遺言で明示することをおすすめします。

 

② 遺産分割協議で特別受益の持ち戻し免除(遺産に加えない)をしてあげる方法

 

・ 遺産分割協議にあたり、特別受益者以外の相続人全員が「特別受益分は考慮しない」と認めたときは、特別受益の持ち戻し(生前贈与をもらった相続人の取り分を減らすこと)を免除することができます。

 

 

4. その他、特別受益の持ち戻しを不問にする場合 

 

 生前贈与したものが、天災や他人の行為などでなくなったり、壊れたりした場合には、特別受益の持ち戻しはしません。

 ただし、 もらった者に責任のある行為でなくなったり、壊れたりした場合には、貰ったままの状態で存在するものとして、時価で評価し「みなし相続財産額」に算入します。(民904条)  

 

 

5. 特別受益の持ち戻しを免除する遺言文例

 

【文例1】 生前贈与

 

「遺言者は、これまで長男○○○○、長女〇〇〇〇、次女〇〇〇〇にした生前贈与による特別受益持ち戻しについては、これをすべてを免除する。」 

 

【文例2】生前贈与

 

「遺言者は、これまでに長男○○○○(昭和△△年△月△日生)、長女○○○○(昭和△△年△月△日生)、次女○○○○(昭和△△年△月△日生)に与えた生前贈与ついては、遺言者の相続に関し、相続財産の算定にあたってはなかったものとして算入しないものとする。」

 

【文例3】 生前贈与

 

「遺言者は、長男○○○○(昭和△△年△月△日生)に、昭和△△年△月に住宅資金として援助した弐百万円については、相続財産の算定に当たっては、長男の家計の状況を考慮し、持ち戻しを免除する。」

 

【文例4】 遺贈

 

「遺言者は、長男○○○○(昭和△△年△月△日生)に対して現金弐百万円を相続させる。 

 遺言者は、遺言者の相続に関し、相続財産の算定に当たっては、長男の家計の状況を考慮し、前条記載の遺贈については持ち戻しを免除する。」

 

【文例5】遺贈

 

「遺言者は、長男○○○○(昭和△△年△月△日生)に対して現金弐百万円を相続させる。 

 遺言者は、遺言者の相続に関し、この相続はその余の遺産分割には影響を与えないものとする。」

 

 

6. 「特別受益の持ち戻しをすることを指示する」遺言

 

(特別受益として遺産に加えることを明確にする定め)

 

【文例】 

 

 「遺言者は、これまでに長女○○○○(昭和△△年△月△日生)の婚姻に際して、弐百万円を援助しているので、この金額を民法第903条による持ち戻し計算をするものとする。」


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