遺産分割協議書条文の書き方①(分割種別条項例)

 1. 不動産の分割

 

(1) 不動産を現物で分割をする

 

相続人 Aは、次の不動産を取得する。

 

(1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

 (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル  

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

 土地については所在、地番、地目、地積を、建物については所在、家屋番号、種類、構造、床面積を書きます。 

 

 土地や建物等の不動産は土地の場合は地番、建物の場合は家屋番号を記載すれば遺産分割協議の効力上は問題ありませんが、登記をする場合、遺産分割協議書が登記原因となる資料となりますので、登記簿全部事項証明書(登記簿謄本)の通りに記載します。( 固定資産評価証明書の表記を転記しないで登記簿全部事項証明書の通りに書く)  

 

 特に、不動産の所在地は、登記と合っているかどうか必ず確認してください。違っていると、登記をする場合、場合によっては、遺産分割協議書を作成し直す必要があります。(再度、相続人全員の署名と実印の押印が必要になる)  

 

 増築等により、現況と登記簿が違う場合は、両方を記載します。

 

※マンション等区分所有建物については、

・ 》》マンション(敷地権登記あり)を相続させる遺言文例 

・ 》》マンション(敷地権登記なし)を相続させる遺言文例 

 

をご参照ください。

 

(3)上記建物内の家財道具の全て

 

 家の中にある物は家を相続した者のモノと考えがちですが、法的にはなかなかとおりません。

 

(4)○○○○火災保険(契約番号○○○)の契約者の権利全部

 

 満期保険金、又は解約返戻金をもらえる場合があります。「出資金」もあります。 

 

(2) 遺産分割までの間の借地借家料を当該不動産取得者に取得させる場合

 

  1.相続人 Aは、次の不動産を取得する。

 

  (1)土地  

   

   (略)

 

   (2)建物

   

   (略)

 

 2.被相続人の死亡日から本日までの間に相続人Aが受領した前項の不動

 産に係る賃料については、相続人 Aに返還義務が無がないことを確認す

 る。 

 

※ 管理費用についても定めておくことが望ましい。

 

(3) 借地権の遺産分割

 

  相続人 Aは、次の借地権を取得する。

 

  (土地の借地権)             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

 

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

(4) 不動産を「換価分割」する 

 

 1.相続人A、Bは、次の不動産を2分の割合をもって共有取得する。  

 

  (1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

   (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル   

         二階 〇〇.〇〇平方メートル    

 

 2.相続人A及びBは、前項の不動産を売却換価し、その売却代金か

 ら、不動産仲介手数料、測量費用、解体費用、登記手続き費用、印紙

 代、譲渡所得税・固定資産税等租税公課、片付け費用その他売却に係

 る一切の費用を控除した残額を遺産分割金として各2分の1の割合で取

 得する。

 

 不動産など現物財産を売却し、金銭で分割することができます。(換価分割) 。

 誰も住む予定がない自宅建物で売却で意見が一致している場合は「換価分割」が向いています。この場合、譲渡所得税等が発生することがあります。

 預貯金など金融資産を換価分割で分ける場合もあります。   

 

(5) 不動産を「代償分割」する 

 

 1.相続人Aは、次の不動産を取得する。  

 

  (1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

   (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル   

         二階 〇〇.〇〇平方メートル    

 

 2.相続人A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償とし

 て、B及びC(代償金取得権利者)に対し、令和〇〇月末日限り、

 各金〇〇万円をそれぞれの指定する預金口座に振込する方法により支払

 う。なお、振込手数料はA(代償金支払義務者)の負担とする。  

 

 相続人のうちの特定の一人が現物財産を取得し、他の相続人には、代わりに遺産分割額の不足分を代償金として金銭で支払うことができます。ただし、「遺産分割前の相続財産から、承継債務として代償金を支払うことはできません」。 なお、代償金支払義務者が遺産分割協議が有効に成立した後に遺産分割で取得した財産の中から支払うことは、代償金を相続財産からで支払うことにはならず、問題ありません。 

  代償分割や換価分割の場合は譲渡所得税等が発生することがあります。

 

 代償分割の条文は、①誰が、②誰に、③何の代償として、④いくらを(支払金額)、⑤どのように(支払方法)、⑥いつまでに(支払期限)支払うのか、⑦違反した場合の処置(ペナルティー)について記載します。

 

(6) 不動産を共有分割する

 

 下記の不動産は、相続人Aが3分の2、相続人Bが3分の1の共有持分

 割合で取得する。

 

  土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

(私道持分の場合)

 

  土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    公衆用道路

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル 

 

     被相続人〇〇〇〇持分 〇〇〇〇〇分の〇 

 

(7) 不動産に配偶者居住権を設定する

 

 1.相続人 A(長男)は、次の不動産を取得する。

 

  (1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

   (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル 

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

 2.相続人 B(妻)は、相続開始時に居住していた前項(2)の建物に

  つき、存続期間を Bの終身の間とする配偶者居住権を設定する。

 

(配偶者居住権の存続期間を限定する場合の条項例)  

 

 1.相続人 A(長男)は、次の不動産を取得する。

 

  (1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

   (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル 

         二階 〇〇.〇〇平方メートル

 

 2.相続人 B(妻)は、相続開始時に居住していた前項(2)の建物に

  係る配偶者居住権を取得する。ただし、本件については、配偶者居住

  権の存続期間を被相続人の死亡時から10年間とする。

 

2. その他、預貯金等の現物分割

 

(1) 預貯金

 

(預貯金ごとに分配する場合)

 

 ① 相続人Aは、次の預金を取得する。

   〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義 全て

 

   ② 相続人Bは、次の預金を取得する。

   〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義

  及び出資金の全て

 

  ③ 相続人Cは、次の貯金を取得する。 

   ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇名義 全て

 

※残高が異なることにより相続人間で不公平が生じ、これを調整する必要がある場合は、不足分を代償金として金銭で支払う旨の条項を定めることができます。

 

(1人の相続人に全ての預貯金を取得させ、他の相続人には代償金として金銭で支払う場合)

 

 1.相続人Aは、次の預貯金を取得する。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義  全て

 ② 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義  全て

 

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇名義 全て

 

 2.相続人A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償とし

 て、B及びC(代償金取得権利者)に対し、令和〇〇月末日限り、

 金〇〇万円及び金〇〇万円をA及びBが指定するそれぞれの預金口座に

 振込する方法により支払う。なお、振込手数料はA(代償金支払義務

 者)の負担とする。 

 

(全ての預貯金をまとめて割合で分配する場合)

 

 1.相続人A、相続人B及びCは、次の預貯金を各3分の1の割合で取得す

 る。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義  全て

   ② 〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義

  及び出資金の全て

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇名義 全て

 

 2.相続人 A、 B及びびCはAを代理人と定め、この預金相続に必要な手

 続きをする一切の権限を委任する。AはB及びCに対し、令和〇年〇〇月

 末日限り、金〇〇万円及び金〇〇万円をA及びBが指定するそれぞれの

 預金口座に振込する方法により支払う。なお、振込手数料はAの負担と

 する。 

 

※代理人と定め預金相続に必要な手続きをする一切の権限を委任する場合には委任状が必要です。

 

※預金の名義変更(預金相続)の仕方については、

・ 》》預金の名義変更(預金相続)の仕方  をご参照ください。

 

預貯金については従来、遺産分割の対象とはならないと考えられてきましたが、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定において、預貯金も遺産分割の対象になる旨の判断がなされました。(出典:・みらい総合法律事務所【編著】( 2021)『応用自在!遺言書・遺産分割協議書作成のテクニック』日本法令.469頁)

 

 預金の特定は「金融機関名・支店名」「口座の種類(定期預金等)」「口座番号」「口座名義人(書かなくても可)」を書き特定します。 

 

 ゆうちょ銀行の場合は「ゆうちょ銀行」「口座の種類(通常貯金等)」、「記号」「番号」を書きます。

 

「残高」は利息などによって変動の可能性があり、把握している残高と実際の金額が異なる場合、解約できなくなる恐れがありますので「すべて」と記載することをおすすめします。 

 

 相続財産の預貯金すべてを1人に取得させる場合も、単に「預貯金のすべて」としないで預貯金を特定する記載をすることをおすすめします。(預貯金の相続手続きにおいて便利)  

 

(2) 投資信託

 

 相続人Aは、次の投資信託を取得する。 

  ゆうちょ銀行 〇〇投信 記号番号 〇〇〇〇名義 全て

 

(3) 株式 

 

 相続人Bは次の株式を取得する。 

  〇〇証券株式会社〇〇支店の被相続人名義の口座の株式

  ➀ 〇〇株式会社 普通株式  ○○○○株

  ② その他、預託している被相続人の全財産 ※予備的条項です。

 

(4) (被相続人が自分自身を受取人として指定している場合の)生命保険

 

   相続人Cは、次の保険金請求権を取得する。 

  〇〇生命保険普通養老保険 保険証書記号番号 

 

(5) 生命保険の入院給付金

 

  相続人Cは、次の保険金請求権を取得する。 

 

  〇〇生命保険の入院給付金の全て

 

 入院給付金は、受取人が被相続人の場合は相続財産になります。

 

(6) 自動車

 

 相続人Dは、次の自動車を取得する。 

  ➀ 車名   〇〇〇〇

  ② 登録番号 〇〇〇 〇〇〇〇  

  ③ 車台番号 〇〇〇〇 

 

 車体番号または登録番号を書き特定します。誰が、何を、どれだけ取得するか、取得者、分割の客体(財産)を明確に特定できるように表記します。   

 

絵画、貴金属、腕時計については、

・ 》》遺贈対象物(客体)の特定の仕方

をご参照ください。 

 

3. 代表相続人が財産を取得し、葬儀関係費用等を控除した金額を各相続人に分配する(代償分割」)

 

 1.相続人Aは、次の預貯金を取得する。

 

 ① 〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義  全て

   ② 〇〇農業協同組合〇〇支店 定期預金 口座番号 〇〇〇〇名義

  及び出資金の全て

   ③ ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 〇〇〇〇名義 全て

 

 2.相続人A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償とし

 て、B及びC(代償金取得権利者)に対し、前項の払戻金から次の諸費

 用を控除した金額を3分の1ずつ、令和〇年〇〇月末日限り、A及びB

 が指定するそれぞれの預金口座に振込する方法により支払う。なお、振

 込手数料はA(代償金支払義務者)の負担とする。 

 

 未払い入院費用、葬儀関係費用、仏事費用

 

 

(参考)

 遺産分割の方法には、

①相続人一人ひとりに、財産の形状や性質を変更することなく現物で分ける「現物分割」、

②相続財産を未分割のまま競売し現金化して分ける「換価分割」、

③不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償金分割」、

④同じく、不動産の場合にみられますが、相続人の共有にして持分で分ける「共有分割」があります。