遺産分割協議書作成のポイント

□ 遺産分割協議書は、不動産の相続登記に必要であるばかりでなく、後日の証拠としても重要です。

 

□ 後日新たな遺産が見つかり、紛争や再分割が必要とならないよう、そうした場合の対応についても記載しておきましょう。

 

□ 相続人が遠方にいるため一堂に会して話し合うことが困難な場合は、誰かが代表となって遺産分割協議書の案を作り、転送しあって承諾を得る方法があります。

 

 

□ 分割財産に預貯金があるときは、金融機関への書類にも押印し、受領者を確定しておくと便利です。


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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント関連情報

1 遺産分割協議書の形式上の留意点

 

① 遺産分割協議書は自筆による必要はありません。

 

② 作成日、被相続人の氏名・死亡年月日を記載します。   

 

③ 相続人全員の住所記入し、氏名を自書し、実印で2か所捺印し、各通に印鑑証明書を添付します。

 

※ 相続人の住所は、住民票・印鑑証明書のとおり記載します。

※ 氏名は自書します。(氏名は自書でなくともよい、とされていますが、証拠力の強い自書をおすすめします。)

※ 印鑑は認印でも有効とされていますが、証拠力の強い実印をおすすめします。

※ 財産を何も取得しない相続人も署名捺印します。

 

⑤ 複数枚にわたる場合は、左側をホッチキスで綴じ、 ページの境に相続人全員の実印で契印を押します。 

 

⑥ 訂正する場合、訂正箇所の欄外に全員が訂正印を押します。

 

⑦ 相続人の人数分作成し、各自1通ずつ保管します。

 

(遺産分割証明書)

 遺産分割協議書は、必ずしも1通の書類に全員が連名で作成する必要はありません。同じ内容の「遺産分割証明書」を人数分×人数分作り、1人に人数分ずつ渡し、それに各相続人が署名・捺印し、結果的に相続人全員が署名・捺印したものを揃えれば、効力は同じです。

 

 

2. 遺産分割協議書の条項上の留意点

 

(1)「相続人全員で協議した」という趣旨の文言を必ずどこかにいれる 

 

 後日の紛争を予防するため、「相続人全員で協議した」という趣旨の文言を必ず遺産分割協議書のどこかにいれることをお勧めします。

 

 

(2)遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成するとき

 

 

 遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成するときは、後日の紛争を予防するため、「遺言の存在にかかわらずこれと異なる遺産分割協議をする」と明記することをお勧めします。

 

 

(3)最後の住民票の住所と不動産の全部事項証明書に記載されている住所が一致しないときは

 

 相続登記の際には亡くなった方の最後の住民票の住所と不動産の全部事項証明書に記載されている住所が一致する必要があります。 一致の確認ができない場合は、遺産分割協議書につぎの文言を書き加える必要があります。

 

 

『なお、上記不動産につき、被相続人の最後の住所は○○○○で登記上の住所は○○○○ですが、住民票の除票や戸籍の附票を取得しても一致を確認できませんでした。しかしながら、上記不動産は被相続人の所有に相違なく、これにつき何か問題がおきましても相続人全員で責任を負うことを申述いたします。』 

 

 

(4)後日新たな遺産が見つかった場合に備える

 

 後日新たな遺産が見つかり再分割が必要となると相続人に負担です。新たな遺産が見つかった場合の対応についても記載しておきます。 

 

 「本書に記載されていない相続財産が判明した場合は、相続人 ○○○○(配偶者) がすべて取得する。」

 「本書に記載されていない相続財産が判明した場合は、法定相続分に従って分配する。」

 

 

(5)「誰が、何を、どれだけ相続するか」を明確に書く

 

 遺産分割協議書には、「誰が、何を、どれだけ相続するか」を明確に書きます。 

 

 

(6)分割の客体の表記

 

① 不動産は、登記事項証明書(登記簿謄本)どおりに 、土地については、所在地、地番、地目、地籍を、建物については、所在地、家屋番号、構造、床面積を書き、特定します。 

       

② 預貯金の場合は「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号(証書番号)」を書き、特定します。 

 

※ 「残高」は利子などによって変動の可能性があるので書かないことをお勧めします。  

 

③ 株式、公社債については、銘柄、証券番号、株数を書きます。

 

④ 自動車の場合は、車体番号または登録番号を書き、特定します。

 

 

(7)代償分割がある場合

 

 不動産などを多めに相続する人が他の相続人に現金を払う場合(代償分割)は、①誰が、②誰に、③何の代償として、④その金額、⑤支払方法、⑥いつまでに支払うか、⑦違反した場合の処置(ペナルティー)について書きます。

 

 

(8)「相続人以外への包括遺贈」がある場合

 

 「相続人以外への包括遺贈」がある場合は、その遺贈分額を、誰が支払うか、その金額や支払方法を明確に書いておきます。

 

 

(9)委任の規定

 

 登記の申請や預金の払い戻し請求を相続人の代表にやってもらう場合は、委任の規定を入れます。 

 

 

 

(10)祭祀承継者

 

 遺産ではありませんが、後日の紛争を予防するため、「祭祀承継者」を明記することをお勧めします。

 

 

(11)債務の負担に関する取り決め

 

 遺産分割協議書で債務の負担に関する取り決めをしても、債権者はこれに拘束されません。法定相続分に従って請求することができます。

 

 

 

(12)債務名義

 

 

  遺産分割協議書で強制執行をするためには、きちんとした「債務名義」(強制執行することを許可した公文書)となっていなければなりません。

 

 そのためには、「いつまでに、いくらを支払うか」を明確に記載する必要があります。

 

(給付文言)

 

 「支払う」「明け渡す」「引き渡す」というような表現で記載する必要があります。

 「支払うものとする」「明け渡すこととする」「引き渡すこととする」といった表現は強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。

 

 遺産分割協議書に、作為義務(何かをなすべきこと)を内容とする合意を記載する場合は「〇〇する」という表現にします。

 不作為義務(何かをしないこと)を内容とする合意の場合は「〇〇をしない」という表現で記載する必要があります。

 「〇〇をするものとする」「〇〇をしないものとする」といった表現は強制執行をすることができる給付文言にはならないとされています。

 

(給付内容)

 

 遺産分割協議書には、誰が、誰に対して、どのようか給付をすべきなのか、あるいはすべきでないのかを明確に表現し記載する必要があります。

 

(給付の対象)

 

 遺産分割協議書には、給付の対象物を特定する表現で記載する必要があります。

 不動産の場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)のとおりに表現し記載する必要があります。

 

(確認事項)

 

 確認事項は、特定の権利もしくは法律関係の存在または不存在を確認する合意を内容とする条項です。対象を特定する表現で記載する必要があります。

 

(形成条項)

 

 形成条項とは、新たな権利の発生、変更、消滅の効果を生ずる合意をすることを内容とする条項です。

 

(道義条項)

 

 道義条項とは、道義的な責任を認め合い、今後の紛争を予防するために記載する条項で、強制執行することはできません。給付条項と解釈されないよう「約束する」などといった表現で記載する必要があります。 


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