遺産分割協議の進め方

□ 相続人が二人以上いるときは、一旦、相続財産は、各相続人の法定相続分に応じた共有となります。

□ 遺産分割協議の前提として、①相続財産・債務のリストアップ、②相続人の確定 を行います。

□ 一般的には、配偶者若しくは長男などが中心となって、相続人全員で話し合い、「遺産分割」を決めます。

□ 遺産分割協議で、個々の財産について、どの財産を誰が相続するか、「現物分割」か「換価分割」か「代償金分割」か「共有分割」にするかなど、財産の分割方法を確定します。

 

□ 遺産分割は一度に全部分割する(全部分割)するのが原則ですが相続人全員が合意すれば一部を先に分割(一部分割)することもできます。預貯金など遺産が相続人の生活に欠かせない場合や、一部の遺産を先に売却し債務の支払いに充てなければならないといった事情のある場合は、先に分割することもやむを得ません。 

□ 遺産分割協議は、被相続人の死亡後いつでもできますが、10か月以内に遺産分割協議をまとめないと、居住用財産売却の特例等の相続税の 各種税額控除 が受けられなくなります。 10か月以内に遺産分割協議を終わらせることができなかったときは、法定相続分通り相続したものとして相続税の申告・納付を行い、遺産分割協議がまとまり次第、修正申告します。 

※ 本ページをお読みになる前に、》相続の流れ をお読みいただければ、より理解し易いかと思います。

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、配偶者の住まいを守るため、結婚20年以上の場合、生前贈与や遺言で自宅を贈与されたときは、遺産分割の対象から除かれることになります(特別受益の持ち戻しをしない)

 また、「配偶者居住権」*が創設され、遺産分割にあたって、自宅について、「配偶者居住権」を配偶者、「所有権」を子ども等が負担付所有権で取得すれば、配偶者は「配偶者居住権」により生涯無償で住めることになります。配偶者居住権は相続する権利ではなく、遺言や遺産分割協議による法定相続人の合意で取得できることになります。 

*「配偶者居住権」とは、被相続人の配偶者が相続開始の時に居住していた建物を自身の死亡まで無償で使用収益できる権利です。遺贈、遺産分割、家庭裁判所による遺産分割の審判によって、被相続人の配偶者が取得する法定債権です。配偶者に一身専属的な権利であり、譲渡はできません。配偶者居住権(長期)では、存続期間が長期間に及ぶことから、第三者対抗要件としての登記が定められています。

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、死亡前にされた相続人への生前贈与(特別受益)のうち死亡前10年間にされたものに限り、遺留分を算定する為の財産の価額に算入するようになります。

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、相続人ではない親族が無償の療養看護や労務の提供をした場合に、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになります。具体的には、6親等以内の親族、以内の血族と、3親等以内の配偶者が介護してきたときなどが該当します。ただし、戸籍上の親族に限られます。

注意事 項 遺留分減殺請求は、遺留分侵害の現物でしか返還を求めることができず、不動産の場合、共有不動産にするしかなかったが、民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。事業承継の場合の自社株については、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。



行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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Ⅰ 遺産分割協議の進め方

 

STEP1 長男などが取りまとめ役になって各相続人に遺産分割協議の連絡をします。

 その前提として、①相続財産・②債務のリストアップ、相続人の確定をします。

・被相続人の氏名、戸籍、最後の住所、生年月日、死亡年月日の確認

・相続人全員の氏名、戸籍、住所、生年月日、被相続人との続柄の確認

  

STEP2  ①相続人全員が集まり遺産分割の協議を行います

②取りまとめ役は各相続人の主張を聴取整理し遺産分割協議書案を作ります

 

STEP3 各相続人から署名捺印をしてもらい、印鑑証明書も提出してもらいます

 

 STEP 1 遺産分割協議は、被相続人の死亡後いつでもできます。各相続人へ遺産分割協議の実施を知らせます

 

1. 遺産分割協議に参加できる者

 

□ 共同相続人、包括受遺者、相続分の譲受人は、いつでも遺産分割を要求することができます。  

□ 「相続分の譲受人」は、相続人と同じ地位に立ち、遺産分割手続きに参加します。譲受人をはずした遺産分割は無効です。

※ 無断譲渡の場合は、他の相続人に取戻権があり、本来の相続人は譲渡された相続分を買い戻し、遺産分割に対する譲り受け人の干渉を排除することができます。 

□ 「代襲相続人」「認知された子」は遺産分割協議に参加できます。 

※ 「遺言で認知した子」が参加しない遺産分割は無効とはならず、価格による請求ができるにとどまります。 

※ 上記以外の者が入って行ったときや、相続人が一人でも参加しない遺産分割協議は無効とされ、やり直しとなることがあります。

 

注意事 項 特別の配慮が必要な相続人

 

◇ 認知症の人

◇ 未成年者 

◇ 胎児

◇ 海外等遠くに住んでいる相続人

◇ 不在者

◇ 行方不明者

◇ 生死不明の不在者

◇ 相続権の存否が不確定の者

・ 訴訟を提起されるなどして相続人の地位が否定される可能性のある者

・ 相続人の地位を取得する可能性のある者

 

□ 詳しくは、》相続の流れ をご覧ください

 

 

STEP 2 相続人全員が集まり遺産分割の協議を行います。一部の相続人を除外したり、その意思を無視した遺産分割協議書は無効です

 

□ 取りまとめ役の留意事項

 

1. まず、自分が遺産分割協議の取りまとめ役になることを了承してもらいます。

2. 他の相続人全員の意向を聴きます。次いで自分の考えを話し、協力をお願いするようにしましょう。

3. 一人ひとりの事情にも出来るだけ配慮して遺産分割の案をつくり、それをもとに話し合います。

4. 相続税がかかる場合は、1次相続と2次相続の全体を通じて相続税負担が最少になるよう遺産分割します。

 

 

□ 遺産分割の協議で話し合うこと

 

① 一部分割 

□ 遺産分割は一度に全部分割する(全部分割)するのが原則ですが、相続人全員が合意すれば一部を先に分割(一部分割)することもできます。  

 預貯金など遺産が相続人の生活に欠かせない場合や、一部の遺産を先に売却し債務の支払いに充てなければならないといった事情のある場合は、一部の遺産を先に分割することもやむを得ません。

 ただし、争いの種を残さないためにも1回で分割するのがベストです。

 

注意事 項  民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により「預金の仮払制度」が創設され、遺産分割前でも、預金の一定額までは、単独で払い戻せるようになります。

 払い戻せる金額は、預貯金額(*金融機関ごと)×1/3×法定相続分

 

② 「相続する割合」 

□ 遺言で指定している場合は、遺言で指定した相続分となります(「指定相続」)。

 遺言で指定していない場合は、原則として民法の法定相続分に従います(「法定相続」)。

 ただし、遺言での指定の有無にかかわらず、相続人全員の合意があれば自由に決めることができます。また、特定の相続人の相続財産をなしとする遺産分割協議も有効とされています。

 

③ 「特別受益」の持ち戻しの扱い 

□ 生前贈与をどこまで特別受益と判断するのかは、遺産分割協議の中で、相続人全員の合意で決めることができます。

□ 特別受益の存在は、あると主張する相続人が立証しなければなりません。

□ 遺産分割を法定相続分を基準として行う場合(これが原則です)は、生前贈与など遺産の前渡しを受けた相続人については、特別受益の持ち戻し(生前贈与などを遺産に加えること)ができます。 

 婚姻期間20年以上の夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする「贈与税の配偶者控除」の特例規定がありますが、これ適用して贈与した財産でも、贈与者の死亡後は、特別受益となります。

□ 被相続人が遺言などで特別受益の持ち戻しを免除する意思表示をしていたときは、遺留分を侵害しない限り、特別受益の持ち戻しはしません。

 

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、配偶者の住まいを守るため、結婚20年以上の場合、生前贈与や遺言で自宅を贈与されたときは、遺産分割の対象から除かれることになります(特別受益の持ち戻しをしない)

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、死亡前にされた相続人への生前贈与(特別受益)のうち死亡前10年間にされたものに限り、遺留分を算定する為の財産の価額に算入するようになります。

 

□ 詳しくは 》特別受益の持ち戻し をご覧ください。

 

 

 

③ 「寄与分」がある場合、その扱い (これは遺産分割ではありませんが、遺産分割の前提となる協議です)

 

□ 「寄与分」があるか否か、あるとしたらどれくらいの割合かは、相続人全員の協議によって決めます。 

 

※ 被相続人に対し商売を手伝うなど労務の提供、資金援助、療養看護などを行い、相続財産の増加に貢献(寄与)した相続人については、寄与分として取り分を増やすことができます。

 例えば、「長男の嫁が」義母を献身的に介護した場合は、義母の遺産分割協議にあたって「長男が」嫁の介護を理由に寄与分を主張できます。 

 

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、相続人ではない親族が無償の療養看護や労務の提供をした場合に、「特別寄与料」として金銭を請求できるようにようになります。具体的には、6親等以内の親族、以内の血族と、3親等以内の配偶者が介護してきたときなどが該当します。ただし、戸籍上の親族に限られます。

 

□ 詳しくは 》寄与分 をご覧ください。

 

④ 「相続放棄」「承認」「限定承認」についての各相続人の意向に基づいて、「財産及び債務の承継者」を確定します

 

□ 「相続放棄」をする人がいる場合で相続財産は借金の方が多そうなときは、繰り上がって相続人となった人がそれとは知らずに借金だけ相続するといったことにならないよう、第三順位の相続人くらいまで集まってもらいったほうがよいでしょう。 

□ 負担付遺贈を受け、負担を履行したくない場合は、遺贈を放棄することができます。その場合は、「負担の利益を受ける者」が自ら受遺者になります。相続人全員で協議して別の人に分配し直し、その人に義務を履行してもらうこともできます。 

□ 相続人の一人にすべての財産を相続させたい場合、被相続人に きょうだい(若しくはその子) がいるときは相続放棄の方法をとってはいけません。せっかく相続放棄しても被相続人の きょうだい に行ってしまいます。他の相続人が「なにも相続しないという内容の遺産分割協議書」を作ってください。

 

⑤ どの財産を誰が相続するか、「現物分割」か「換価分割」か「代償金分割」か「共有分割」にするかなど、財産の分割方法を確定します。

 現物分割が原則的な分割方法です。(258条2項)  

 

□ 詳しくは 》実際の遺産分割の方法 をご覧ください。

 

⑥  債務の負担者を決める  

□ 「借金」などの債務は相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に相続され、遺産分割の対象になりませんが、「遺産分割の協議で債務の負担者を決める」ことはできます 。

 

■ 「債務を受け継ぐ人」や、「相続手続きの費用を誰が負担するか」を決めます。

 

■ 詳しくは 》「債務の相続」 をご覧ください。 

 

 

STEP 3 遺産分割協議書の作成

 

□ 遺産分割協議「書」の作成は義務ではありません。「書」を作成しなくても協議分割は成立します。ただし、不動産の登記、預貯金の名義変更、相続税の申告、「配偶者の税額軽減」を受けるときなどに遺産分割協議「書」が必要となることがあります。

 

□ 各相続人から署名捺印をしてもらい、印鑑証明書も提出してもらう必要があります。

 

※ 相続人が未成年の場合は、遺産分割協議に参加した法定代理人(または、特別代理人)が署名捺印します。

 

※ 併せて、相続手続に必要な他の書類にも署名捺印をしてもらいっておくと便利です。

 

 

※ 相続人が遠方にいるため一堂に会して話し合うことが困難な場合はどうするか

 

1. 相続人が遠方にいるため一堂に会して話し合うことが困難な場合は、取りまとめ役が遺産分割協議書の案を作り、転送しあって承諾を得る方法があります。

 

 

2. 遺産分割協議書は、必ずしも1通の書類に全員が連名で作成する必要はありません。同じ内容の「遺産分割証明書」を人数分×人数分作り、1人に人数分ずつ渡し、それに各相続人が記名・押印し、結果的に相続人全員が署名押印したものを揃えるという方法も可能です。 

 

※ 以上を3ヶ月以内を目標に行います。

※ 10か月以内に遺産分割協議を終わらせ、遺産分割協議書作成のうえ申告しないと、相続税の各種税額控除* が受けられなくなります。

 

* ①贈与税額控除 ②配偶者の税額軽減 ③未成年控除 ④障害者控除 ⑤相次相続控除 ⑥外国税額控除 ⑦相続時精算課税制度に係る贈与税額控除 

 

※ 10か月以内に遺産分割協議を終わらせることができなかったときは、法定相続分通り相続したものとして相続税の申告・納付を行い、遺産分割協議がまとまり次第、修正申告します。  

 


□ 遺産分割までの間、財産の扱いはどうなるか

 

土地・建物 相続人の共有
借地権   〃
預貯金・現金 相続人全員の合意で使用
有価証券 相続人の共有
生命保険金(受取人の指定のないもの)   〃
自動車   〃
未払いの税金 相続人全員の合意で納付
借入金 相続人全員の合意で返済

※ 相続人の共有となっている財産は相続人により遺産分割協議が終わるまで原則として処分することはできません。

(出典:比留田薫・岡田茂朗 監修(2003)「葬儀後の手続き・相続のすべてがわかる本」主婦の友社.107頁)


Ⅱ  遺産分割協議がまとまらない場合

 

□ 遺産分割協議がまとまらない場合は、相続人の誰かが、家庭裁判所に調停の申し立てをすることができます。

 

(1) 家庭裁判所の調停

 

■ 調停による遺産分割は、通常、法定相続分で分割されることとなります。 

■ 分割案に相続人全員が合意すると調停調書が作成され、調停の内容を強制的に実現することになります。

 

■ 熟慮期間中(3か月間)は調停の申し立てはできません。

 

 

(2) 家庭裁判所の審判

 

■ 調停でもまとまらない場合は自動的に審判手続きが開始され、家庭裁判所の審判により、遺産を分割します。 

 

□ 詳しくは 》遺産分割調停 をご覧ください。

 

 

Ⅲ  遺産分割協議の効力(遺産分割協議のやり直し)

 

① いったん成立すれば効力が生じ、無効や取消の原因がない限り、原則としてやり直しすることはできません。 

② 債務を履行しないなど、遺産分割協議において決めた義務を履行しない場合でも、遺産分割協議自体を解除することはできないとされています。 

③ 相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を解除し、新たに遺産分割協議をすることができます。 

④ 訴訟を提起されるなどして相続人の地位が否定される可能性のある者の参加した遺産分割協議は、結果的に相続人の地位が否定された場合は無効となり、やり直しが必要となります。 

⑤ 相続人の地位を取得する可能性のある者の参加しない遺産分割協議は、相続人の地位が認められた場合は無効となり、やり直しが必要となります。 

⑥ 遺産分割協議が成立したのち認知が認められた子が参加しなかった遺産分割協議は無効とはならず、価格による請求のみにとどまります。 

⑦ 遺産分割協議が成立したのち離婚の無効が認められた者が参加しなかった遺産分割協議の効力については争いがあります。 

  

⑧ 遺産分割協議が終わってから遺言書が見つかった場合 

□ 遺言で、新たに第三者への遺贈が判明したり、相続人廃除など相続人に増減が生ずる場合はやり直しが必要となります。このようなケースを除き、相続人全員が、確定している遺産分割協議の内容でいくと決めた場合は、遺産分割協議が終わってから遺言書が見つかった場合でも遺産分割協議は有効です。 

 

 

Ⅳ  遺産分割協議「書」が必要な場合

 

1. 下記の相続手続きをする場合には遺産分割協議「書」が必要となる場合があります。

① 不動産の登記手続き

② 預貯金の名義変更・解約手続き(場合による)

③ 相続税の申告で、配偶者の税額軽減の特例等、相続税の特例を受けるとき

 

 

2. 遺産分割協議「書」を作っておいたほうがよい場合

 ①「祭祀承継者を決めた」場合、②「相続人が多い」とき、③「相続人同士が疎遠」なとき、④「複雑に相続」するとき、⑤「数次相続」のときは、のちのトラブルを防ぐため、話し合っただけでなく、証拠として遺産分割協議「書」を作っておくことが望ましいと思います。 


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