遺産分割の対象財産

~香典は相続財産?遺産分割の対象財産には何が該当するのか~

□ 委任による契約上の権利義務、代理権、扶養請求権など、被相続人の一身に専属した権利義務は相続人に承継されません。(小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識』日本加除出版.6頁)


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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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ポイント関連情報

1. 不動産、動産、借地・借家権、株主権などの「積極財産」が、遺産分割の対象財産です

 

□ 遺産分割協議を要するのは土地、家屋、現金*、貴金属・宝石類、書画・骨董、家財道具、自動車、株式などの有価証券、借地・借家権、株主権、生命保険金*、遺産から生じた果実* などの「積極財産」です。

 

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における自宅の贈与は、特別受益持ち戻しをしないこととなります。

注意事 項 民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により、遺産分割にあたり、自宅を配偶者が「配偶者居住権」、子どもが「所有権」を取得する、という分け方ができるようになりま

 

(1)「預貯金」について

 

□ 預貯金等の金銭の支払いを求める債権など分割できる債権は、分割協議を経ることなく、相続開始と同時に相続人の持ち分(法定相続分)に応じて当然に分割され、遺産分割協議をしなくてもよいとされています。  

・ しかし、相続人全員の明示または黙示の合意があれば、他の遺産と合わせて遺産分割協議の対象とすることもできるとされていること、預貯金等の金銭の支払いを求める債権も合わせて調整したほうが分割しやすいこと、加えて、生前贈与を受けた人がいる場合はこのほうが公平であることから、遺産分割の実務においては、預貯金等の金銭債権も遺産分割の対象に含めて遺産分割を行います。 

 

 注意事 項 最高裁が判例変更 

 これまでは、2004の最高裁判決により、預貯金は法定相続分により自動的に分配され裁判で遺産分割の対象にできない、とされてきましたが、2016.12.19の大法廷決定により判例変更がなされ、預貯金は裁判で遺産分割の対象にできることとなりました。

注意事 項  民法改正(30.7.13公布、施行は2年以内)により「預金の仮払制度」が創設され、遺産分割前でも、預金の一定額までは、単独で払い戻せるようになります。

 払い戻せる金額は、預貯金額(*金融機関ごと)×1/3×法定相続分 

 

※ 子ども名義の預貯金については管理状況に鑑み、①被相続人の相続財産として遺産分割の対象に含めるか、又は②生前贈与と判断し遺産分割の対象にせず特別受益として扱うか、若しくは③生前贈与と判断するとともに特別受益の対象にもしないなど、相続人で話し合って決めます。

 

(2)「現金」について

 

□ 現金は債権より動産に近いことから遺産分割が必要とされています。

□ 相続人は遺産分割までの間は自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。

□ 現金についてだけ「先に」遺産分割協議を成立させることができます。

 

(3)生命保険金」の遺産分割における扱い 

 

□ 被相続人(契約者)が自分を被保険者とし、相続人の一人を受取人に指定していた場合は、保険金は遺産には当たらず遺産分割の対象になりません。 相続を放棄した場合も受け取ることができます。保険金受取人は特別受益として持ち戻しをする必要はありません。遺留分減殺の対象にもなりません。

 

※ 保険金の額、遺産総額に対する割合等から他の相続人と著しく不公平とみられる極めて極端な場合は、例外的に特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。

 

□ 被相続人が保険金受取人でありかつ被保険者である場合に限り遺産分割の対象になります。 

 

注意事 項 相続人宛の保険金は相続財産ではないので続人が限定承認をすれば、被相続人の債権者は、質権を設定していない限り、保険金から弁済を受けることはできません。  

 

(4) 遺産から生じた果実」の扱い

 

□ 亡くなった日から遺産分割を行う日までに遺産から生じた、預金に対する利子・地代・家賃など「法定果実」は遺産ではありません。判例上は「遺産と別個のもので各相続人が法定相続分の割合で取得する」とされ、後の遺産分割の影響は受けません(最高裁2005.9.8) 

□ しかし、「遺産から生じた果実」は、相続人全員の明示または黙示の合意があれば他の遺産と合わせて遺産分割協議の対象とすることができるとされていること、これも合わせて調整したほうが分割しやすいことから、遺産分割の実務においては、遺産から生じた果実も遺産分割の対象に含めて考え、銀行口座を取得したものがその利子も取得し、不動産を取得したものが家賃も取得するものとするなどして遺産分割をします。

 

(5) 慰謝料請求権も相続されます(判例)

 

 

2. 死亡退職金遺族年金、香典は遺産分割の対象外です  

 

(1) 死亡退職金遺産分割の対象外です

 

□ 死亡退職金とは公務員や会社員が在職中に死亡したときに支給される退職金です。死亡退職金は、会社の規定で受取人の指定がある場合は、もらう人の固有財産になり、相続財産にはあたらないと判断されています。

 

※ 会社の規定に受取人の指定がない場合は相続財産となります。

※ 死亡退職金が特別受益に当たるかどうかについては、相続人間で著しく不公平とみられるほどに高額の場合は、例外的に、特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。  

 

(2) 遺族年金遺産分割の対象外です

 

□ 遺族年金は、基本的には受給権を持つ人固有の財産とみなされ、相続財産にはあたらないと判断されます。

 

(3) 香典遺産分割の対象外です

 

□ 香典は、通常、葬儀の経費の一部を負担するため、葬儀費用の負担者(喪主)あてに贈与されたものとみなされます。 

□ 相続財産には含まれず、遺産分割の対象にもなりません。相続放棄、特別受益と関係ありません。

 

※ 葬儀費用を相続財産から支出した場合は、香典は相続人が相続分に応じ取得する、という学説が有力です。

 

(4) 墓地・墓石、仏壇、位牌、仏具などは祭祀継承者が承継します 

□ 相続の対象になりません。

 

 

3. 遺言によって相続人以外に贈与した「特定遺贈」及び、相続人以外にした「死因贈与」は遺産分割協議の対象外です

・ ただし、遺言で相続人以外にした「包括遺贈」、包括受遺者にした「死因贈与」、包括受遺者の受けた生前贈与は「特別受益」として「みなし相続財産額」に算入します。

 

 

4. 「債務」については遺産分割の対象になりません

 

□ 借金などの債務は、相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に相続され、遺産分割の対象になりません。 

□ 債務の相続分は、各共同相続人が、贈与、遺贈、遺産の分配も含めた、現実に取得した相続利益(特別受益、寄与分は除きます:多数説)に応じて負担します。

 

□ 債務の具体的な引き継ぎ方法と弁済方法 

① 借金、住宅ローン・月賦や未払いの税金・家賃・地代・医療費、葬式費用、遺産の管理費用などの「可分できる債務」は、原則的には共同相続人が相続分に応じて負担することになりますが、実務的には、分割の対象たる財産から控除し、優先弁済すべきと考えます。 

② 連帯保証人になっていたときはその地位も引き継ぎ、連帯債務は相続分に応じて分割されたものを承継し、その範囲において連帯債務者となります。(最判S34.6.19)  

③ 具体的に「どの債務をどの相続人がどれだけ引き継ぐか」は、「遺産分割の協議」で決めます。

 

□ 詳しくは 》「債務の相続」をご覧ください。

 

 

5. 遺産の管理費用の扱い

 

□ 遺産の管理費用は、本来遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員の明示または黙示の合意があれば、他の遺産と合わせて解決したほうが分割しやすいと考えます。

 

 

6. 遺産分割の対象になっている「不動産の評価」について 

 

□ 遺産分割の対象になる財産価格は、相続開始時の財産価格です。 

□ 遺産分割の際の土地・建物の評価は、現実に分割する時点での時価(不動産の取り引き価格:実勢価格)でするのが原則です。 ただし、相続人の間で合意できればそれでもよいとされています。

 

□ 路線価は時価((公示価格)80%と言われています。路線価は、南側道路や北側道路など土地が接する道路の方位、旗竿地などの増減価要因、環境条件を考慮していません。実際の価値とかけ離れている場合がありますので注意が必要です。

 

※ 相続税は路線価により課税されます。



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