遺産分割の実施方法と実行の指定(現物分割、換価分割、代償金分割 等)

□ 親と子が同居し主な遺産は自宅の土地と建物だけの場合は遺産分割が難しいケースです。共有は後で問題が起きる可能性が高いので、同居している子が自宅の土地建物を相続し他の子には法定相続分のお金を払う、(代償分割)が考えられます。

 

□ 遺産の分割の方法には、①相続人一人ひとりに、財産の形状や性質を変更することなく現物で分ける現物分割」、②相続財産を未分割のまま競売し現金化して分ける「換価分割」、③不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償金分割」土地などを共有にして持ち分で分ける「共有」があります。  

 

□ 遺産分割は一度に全部するのが原則です。ただし、相続人全員が合意すれば一部を先に分割することもできます。預貯金など遺産が相続人の生活に欠かせない場合や、一部の遺産を先に売却し債務の支払いに充てなければならないといった事情のある場合は、先に分割できます。 

 

□ 遺産分割の実行の指定とは、どの財産を誰が相続するかについて話し合い、決めることです。

 

□ 遺産の分割で不動産を共有にした場合、建て替えや持ち分の売却には相続人全員の合意が必要となります。また、その後の相続で共有者はどんどん増えてゆきます。たとえ多少不平等になっても共有は避けるのが無難です。

注意事 項 現行では、遺留分減殺請求は、遺留分侵害の現物でしか返還を求めることができません。また、遺留分減殺請求によって遺贈が無効となり、共有関係が当然に生ずることとされていることから、不動産の場合、共有不動産にするしかありませんでした。これらによって事業継承に支障が出ることがありました。

 民法改正(30.7.13公布)により、これを回避するため遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権とされ、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。事業承継の場合の自社株について、現物ではなく金銭で支払うことができるようになります。また、金銭をすぐに準備できないときは裁判所に支払いの猶予を求めることができます。(施行は2019年(平成31年)7月1日)


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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 1. 現物分割

 

 相続人一人ひとりに現物のまま分配する方法です。たとえば、自宅及び現金は妻に、農地は長男にというふうに、一つひとつの財産について取得者を決めます。なお、土地を分筆して分ける場合も現物分割です。 

 この方法はとても分かりやすい方法ですが、財産の価値がそれぞれ異なるので相続分どおりに分けることが難しく、不公平が出てしまうという欠点があります。

 それぞれが欲しい財産があるや、他人に渡したくない財産がある場合、それぞれの相続分に応じうまく分けられれば最良の方法です。   

 なお、現物分割が原則的な分割方法です。(258条2項)。

 

 

2. 代償分割 

 

 代償分割は現物は相続人の一人に取得させ、他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う方法です。代償金の支払いは協議で分割払いにすることができます。 

 相続財産が居住する不動産、農地、事業用不動産の場合はこの方法が適しているケースが多いと言えます。 また、不動産など物理的に切り分けることによって価値が下がってしまう場合はこの方法を検討します。

 代償分割は柔軟な分割をすることができますが、現物の取得希望者がいて、その人に代償金を支払う資力があることが必要です。

 

注意事 項 代償分割する場合には、遺産分割協議書にその旨を記載しておきましょう。 

 

 

3. 換価分割(価格分割)

 

 相続財産を未分割のまま売却し現金化して分割する方法です。現物分割が困難であり、代償分割もできない場合この方法によります。 

 この方法は公平に分けることができますが、相続財産に住んでいる相続人がいる場合は新たに住まいを探さなければならないという問題や、処分費用がかる、売却益に所得税が課せられることがあるという欠点があります。

 

※ 遺言で換価分割の指示を行うことによって、遺贈の実質的な効果を変えることなく相続手続きや不動産の売却手続きの手間や費用を軽減できます。

 

 

4. 共有分割

 

 土地などを共有にし、持ち分で分ける方法で現物分割の一種です。自己の所有権である「持分の範囲」であれば、自らの持分を自由に譲渡、処分することができます。また、自らの持分を他の共有者または第三者に売却することも自由です。 

 持ち分を超えた短期の賃貸借契約などの管理行為は、持ち分の過半数で決定します。(民法252条)

 売却、改築、形状変更等の処分・変更行為は共有者全員の同意が必要です。(民法251条)

 共有物への第三者の不法行為に対し交渉することや提訴することなど保存行為は単独でできます。(民法252条但し書き) 

 

 住宅は相続人全員で合意すれば、相続登記をすることなくそのまま住み続けることができます。ただし、相続登記が済んでいないと売却手続きはできません。

 

 

5. 共有分割の問題点と対策 

 

(1)住宅共有分割の問題点

 

 住宅を複数の相続人の共有名義にすると、税金の負担に関して、あるいは住宅を補修するときや売却するときにトラブルになりやすいので注意が必要です。

 

(2)土地共有分割の問題点

 

 売却する場合や新しく建物を建てる場合は共有者全員の同意が必要となります。相続により共有者が増えることがあります。

 

(3)土地共有を解消する方法

 

 ①持ち分割合で分筆する、②他の共有者等に売却する、③共有の土地が複数ある場合は共有持ち分を交換する。

 

 

 

注意事 項 遺産の分割で不動産を共有にした場合、建て替えや持ち分の売却には相続人全員の合意が必要となります。また、その後の相続で共有者はどんどん増えてゆきます。

 ①すぐ売却する予定がある場合、居住用の土地に適用される相続税の特例の要件を満たすため、配偶者と子が共有で相続する場合などを除き、たとえ多少不平等になっても避けるのが無難です。 


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