相続財産(遺産分割の対象財産)

□ 香典は相続財産には含まれず遺産分割の対象になりません。 

□ 生命保険金、死亡退職金は相続の対象財産ではありません。ただし、・・・

□ 事故の被害者が損害賠償を請求する権利は、相続人が相続します。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 遺産分割(相続)の対象財産

 

 遺産分割協議を要するのは土地、家屋、現金(*1)、貴金属・宝石類、書画・骨董、家財道具、自動車、株式などの有価証券、借地・借家権、株主権、生命保険金(*2)、遺産から生じた果実(*3)などの「積極財産」です。

 

(*1)「現金」について

 

 現金は債権より動産に近いことから遺産分割が必要とされています。相続人は遺産分割までの間は自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。現金についてだけ「先に」遺産分割協議を成立させることができます。

 

(*2)生命保険金」の遺産分割における扱い 

 

① 被相続人(契約者)が自分を被保険者とし受取人に相続人を指定していた場合は、保険金は受取人の固有財産とされ遺産には当たりません。したがって、遺産分割の対象になりません( 相続を放棄した場合も受け取ることができます。また、遺留分減殺請求の対象にもなりません)。  

 ただし、遺産分割における持ち戻しについては、保険金の額、遺産総額に対する割合等から他の相続人と著しく不公平とみられる極めて極端な場合は、例外的に特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。

 

 ② 被相続人が保険金受取人でありかつ被保険者である場合に限り遺産分割の対象になります。 

 

注意事 項 相続人宛の保険金は、相続財産ではないので、相続人が限定承認をすれば、被相続人の債権者は、質権を設定していない限り、保険金から弁済を受けることはできません。  

 

(*3)遺産から生じた果実」の扱い

 

 亡くなった日から遺産分割を行う日までに遺産から生じた、預金に対する利子・地代・家賃など「法定果実」は遺産ではありません。判例上は「遺産と別個のもので各相続人が法定相続分の割合で取得する」とされ、後の遺産分割の影響は受けません(最高裁2005.9.8) 

 しかし、「遺産から生じた果実」は、相続人全員の明示または黙示の合意があれば他の遺産と合わせて遺産分割協議の対象とすることができるとされています。「遺産から生じた果実」も合わせて調整したほうが分割しやすいことから、遺産分割の実務においては、遺産から生じた果実も遺産分割の対象に含めて考え、銀行口座を取得したものがその利子も取得し、不動産を取得したものが家賃も取得するものとするなどして遺産分割をします。

 

(*4)「預貯金」について

 

 預貯金は、相続人全員の明示または黙示の合意があれば、他の遺産と合わせて遺産分割の対象とすることもできるとされています。預貯金等の金銭の支払いを求める債権も合わせて調整したほうが分割しやすいこと、加えて、生前贈与を受けた人がいる場合はこのほうが公平であることから、遺産分割の実務においては、預貯金等の金銭債権も遺産分割の対象に含めて遺産分割を行います。

 

(2004の最高裁判決により、預貯金は法定相続分により自動的に分配され裁判で遺産分割の対象にできない、とされてきましたが、2016.12.19の大法廷決定により判例変更がなされ、預貯金は裁判で遺産分割の対象にできることとなりました。)

 

(*5) 慰謝料請求権

 

 慰謝料請求権も相続されます(不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる(最大判昭和42年11月1日)

 

(*6) 遺産の管理費用の扱い 

 

 遺産の管理費用は、本来遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員の明示または黙示の合意があれば、他の遺産と合わせて解決したほうが分割しやすいと考えます。

 

注意事 項  民法改正(2018.7.13公布)により「預金の仮払制度」が創設され、遺産分割前でも、預金の一定額までは、単独で払い戻せるようになります。(令和元年7月1日施行※相続開始が施行日前であっても適用されます。)

 

 具体的には、これまでは遺産分割協議が調わなければ預貯金を引き出すことはできませんでしたが、これからは、遺産分割前でも、一定額に限り、相続人が単独で払い戻せるようになります。

 払い戻せる金額は、預貯金額×1/3×法定相続分(金融機関ごと、上限150万円) 

 

※ 子ども名義の預貯金については、その管理状況に鑑み相続人で話し合って決めます。

①被相続人の相続財産として遺産分割の対象に含める、②生前贈与と判断し遺産分割の対象にせず特別受益として扱う、③生前贈与と判断するとともに特別受益の対象にもしないなど

 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における自宅の贈与は、特別受益持ち戻しをしないこととなります。(令和元年7月1日施行 ※生前贈与は令和元年7月1日以降におこなわれたものについて適用。遺贈は遺言書等作成日付が令和元年7月1日以降について適用。)

 

 具体的には、これまでは結婚期間が20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与・遺贈については、相続の時にこれも遺産に加えて相続分を計算する必要がありましたが、これからは、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよいことになります。 

 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、遺産分割にあたり、自宅を配偶者が「配偶者居住権」を取得して住み続け、子どもが負担付所有権を取得する、という分け方ができるようになります。(2020年4月1日施行※改正法は原則として施行日以降に開始した相続に適用されます。)

 

 「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始の時に居住していた建物に、死ぬまで無償で使用できる権利です。また、相続する権利ではなく、遺言や、遺産分割協議による法定相続人の合意により取得できることになります。

 これまでは、配偶者が住んでいる家を相続した場合は預貯金などはあまり相続できませんでしたが、これからは、住んでいる家を「配偶者居住権」で取得すると、配偶者居住権は所有権よりも評価額が低いことから、その分預貯金を多く相続することができます。 

 

 

2. 遺産分割の対象とならないもの  

 

(1) 死亡退職金

 

 死亡退職金とは公務員や会社員が在職中に死亡したときに支給される退職金です。死亡退職金は、会社の規定で受取人の指定がある場合は、もらう人の固有財産になり、相続財産にはあたらないと判断されています。会社の規定に受取人の指定がない場合は相続財産となります。

 

(最高裁昭55.11.27判決。出典:裁判所ホームページ)

死亡退職金の受給権が相続財産に属さず受給権者である遺族固有の権利であるとされた事例

裁判要旨  死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって、配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど、受給権者の範囲、順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合には、右死亡退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利である。 

 

注意事 項 会社の規定で受取人の指定がされており、もらう人が相続人のうちの一人の場合、死亡退職金が特別受益に当たるかどうかについては、相続人間で著しく不公平とみられるほどに高額の場合は、例外的に、特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。  

 

(2) 遺族年金

 

 遺族年金は、基本的には受給権を持つ人固有の財産とみなされ、相続財産にはあたらないと判断されます。

 

(3) 香典

 

 香典は、通常、葬儀の経費の一部を負担するため、葬儀費用の負担者(喪主)あてに贈与されたものとみなされます。相続財産には含まれず、遺産分割の対象にもなりません。相続放棄、特別受益とは関係ありません。

 

注意事 項 葬儀費用を相続財産から支出した場合は、香典は相続人が相続分に応じ取得する、という学説が有力です。

 

(4) 墓地・墓石、仏壇、位牌、仏具

 

 墓地・墓石、仏壇、位牌、仏具などは祭祀継承者が承継します。相続の対象になりません

 

(5) 特定遺贈」及び死因贈与」

 

 遺言によって相続人以外に贈与した「特定遺贈」及び、相続人以外にした「死因贈与」は遺産分割協議の対象外です。ただし、遺言で相続人以外にした「包括遺贈」、包括受遺者にした「死因贈与」、包括受遺者の受けた生前贈与は「特別受益」として「みなし相続財産額」に算入します。 

 

(6) 被相続人の一身に専属した権利(財産分与の請求権等)

 

 委任による契約上の権利義務、代理権、扶養請求権など、被相続人の一身に専属した権利義務は相続人に承継されません。(出典;小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識』日本加除出版.6頁)

 

 財産分与の請求権は、本人が請求しないがぎり、権利を行使できないと考えられています(一身専属権)。本人が請求しなかったときは、相続されません。 

 

 不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となります。判例(最大判昭和42年11月1日)

 

(7) 債務

 

 借金などの債務は、相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に相続され、遺産分割の対象になりません。債務の相続分は、各共同相続人が、贈与、遺贈、遺産の分配も含めた、現実に取得した相続利益(特別受益、寄与分は除きます:多数説)に応じて負担します。

 

注意事 項 債務の具体的な引き継ぎ方法と弁済方法

 

① 借金、月賦や未払いの税金・家賃・地代・医療費、葬式費用遺産の管理費用(相続不動産に関するローンの返済金、固定資産税、家屋修繕費、火災保険掛け金)などの「可分できる債務」は、本来遺産分割の対象ではなく、原則的には共同相続人が相続分に応じて負担することになりますが、実務的には、分割の対象たる財産から控除して具体的相続分額の計算を行い、優先弁済すべきと考えます。(保証債務、連帯保証債務を除きます。相続税は控除すべきでないと考えられています。)

 

② 連帯保証人になっていたときはその地位も引き継ぎ、連帯債務は相続分に応じて分割されたものを承継し、その範囲において連帯債務者となります。(最判S34.6.19)  

 

 一回限りの普通の保証もその地位を引き継ぎます。ただし、身元保証、継続的保証(根保証)については、相続は認められないとするのが一般的です。

 

③ 具体的に「どの債務をどの相続人がどれだけ引き継ぐか」は、「遺産分割の協議」で決めます。

 

□ 詳しくは 》「債務の相続」をご覧ください。   

 

 

3. 遺産分割の対象になっている「不動産の評価」について

 

 土地は実勢価格です 。建物の評価額は固定資産税評価額を参考にします。

 

 □ 詳しくは 》財産の評価の仕方 をご覧ください。

 


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