□ 相続の分譲渡とは「相続人たる地位の譲渡」であり、個々の財産の持ち分の譲渡ではありません。
□ 「遺産はいらない、遺産分割協議への参加も希望しない」場合は、「相続譲渡証書」で無償譲渡することによって事実上の相続放棄をすることできます。
遺産分割協議の前にお金が必要なときに他の相続人又は第三者に「相続分の譲渡」ができます。
□ 他の相続人は、遺産分割に第三者の介入を望まないときは、譲渡された相続分を買い戻し、第三者の干渉を排除することができます。
□ 「相続の分譲渡」により、譲受人は債務も相続分に応じて負担することになるとされています。
ただし、債権者との関係では、債権者が承諾しない限り債務者の交代は認められません。負債や連帯保証人の地位は、相続人が法定相続分に応じて引き継ぐことになるとされています。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 相続分の譲渡とは
遠隔地に住んでいるなどの理由で「遺産はいらないし、遺産分割協議への参加も希望しない」場合、あるいは、遺産分割協議の前にお金が必要だというときには、相続人は、相続開始後、遺産分割までの間に、その相続分を他の相続人又は第三者に有償無償を問わず譲渡できます。
相続分の譲渡は、「相続人たる地位の譲渡」であり、個々の財産の持ち分の譲渡ではありません。相続債務も譲受人が相続分に応じて負担することになるとされています。ただし、債権者との関係では、債権者が承諾しない限り債務者の交代は認められません。
「相続譲渡証書」による無償譲渡で、事実上の相続放棄をすることできます。「相続分譲渡証書」を提出することにより、遺産分割当事者の地位を失います。
相続分の譲渡により相続遺産が確定すると登記ができます。
2. 相続分譲渡財産の買い戻し
相続分の譲受人は、相続人と同じ地位に立ち、遺産分割手続きに参加します。 譲受人をはずして行われた遺産分割は無効です。
共同相続のひとりが、他の相続人に無断で、その相続分を第三者に譲渡した場合には、他の相続人に取戻権があります。
他の相続人は、支出した費用を支払って譲渡された相続分を買い戻し、譲り受け人の干渉を排除することができます。(民法905条)
買い戻す手続きは、譲り受け人に買い戻す旨を通知し、評価額と譲り受け人が譲り受けに際し支出した調査費等の費用を払います。
譲り受け人の承諾は不要です。譲り受け人が受け取らないときは供託します。
買い戻しは、譲渡から一か月以内に行わなければなりません。
3. 相続分「持ち分」譲渡の取り戻し
「持ち分」譲渡の場合には、相続分譲渡財産の買い戻し制度は適用されません。
「持ち分」譲渡をやめさせるには、裁判所に持ち分処分禁止の保全処分を申し立てることが必要です。