相続分の計算の仕方~結局の相続分額(各相続人の分け前)の計算~

□ 遺産の価格は遺産分割時を基準として確定します。なお、特別受益、寄与分が問題となる事案においては、相続開始時を基準として「みなし相続財産」を算出します。(出典:小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 』日本加除出版.76頁)

 

□ 計算の結果、自分の分け前が貰いすぎ(超過特別受益者)になった場合も返す必要はありません。 

□ 計算の結果、「みなし相続財産額」がマイナスとなった場合、マイナス分は、超過特別受益者を除く各相続人が、具体的相続分額に応じて負担します。

(出典:小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 』日本加除出版.58頁) 

注意事 項 民法改正(2018.7.13公布)により、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における自宅の贈与は、特別受益持ち戻しをしないこととなつた。

 改正前は、結婚期間が20年以上の夫婦間で行った居住用不動産の生前贈与・遺贈についても、相続の時に遺産に加えて相続分を計算する必要があったが、民法改正により、遺産分割の対象から除かれ、相続時に遺産として計算しなくてもよいこととなった。

 

(2019.7.1施行 ※生前贈与は2019年7月1日以降におこなわれたものについて適用。遺贈は遺言書等作成日付が2019年7月1日以降について適用。)


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 「相続分」の意味

 

 相続分とは各相続人の分け前のことで、次の二つの意味があります。

 

① 相続分「率」:遺産の上に有する権利義務の割合

② 相続分「額」:相続分の割合に拠り取得すべき遺産部分の価格 

 

2. 結局の相続分額(各相続人の受け取る分け前の価格)

 

(1) 結局の相続分額の計算式 

 

「みなし相続財産額」 ×法定相続分率(遺言で相続分を指定しているときは指定相続分率)」―「特別受益額(各自が既に受け取った生前贈与価格+各自が遺言で受け取った遺贈価格+死因贈与価格)」+「各自が受け取るべき寄与分額」+「同人が負担すべき相続債務額(*)」

 

 

(*) 債務控除は法定相続分にかかわらず、現実に債務を引き受けた人から控除します。

 

※ 遺産の価格計算基準時 遺産の価格は、「遺産分割時を基準」として確定します。

 

(2)「みなし相続財産額」(相続分の算定の基礎となる遺産)の計算式 

 

①「被相続人が相続開始時に持っていたプラスの財産の価格」+②「特別受益額」 ― ③「寄与分額」― ④「相続発生時の負債額 

 

 (計算式の解説) 

 

① 被相続人が相続開始時に持っていたプラスの財産の価格

 

ア、遺言で相続人にした「遺贈」は「特別受益」として「みなし相続財産額」に算入します。相続を放棄した者の受けた「遺贈」はみなし相続財産額に残置されます。

 

 民法改正(2018(H30).7.13公布)により、婚姻期間20年以上の夫婦相互間における自宅の贈与は特別受益持ち戻しをしないこととなった。(2019.7.1施行 ※生前贈与は2019年7月1日以降におこなわれたものについて適用。遺贈は遺言書等作成日付が2019年7月1日以降について適用される。) 

 

イ、遺言で相続人以外にした「特定遺贈」、相続人以外にした「死因贈与」は「みなし相続財産額」に算入しません。  

 

ウ、生命保険死亡保険金については、被相続人が保険金受取人でありかつ被保険者である場合に「みなし相続財産」に算入します。 

 被相続人(契約者)が自分を被保険者とし、相続人の一人を受取人に指定していた場合は、保険金は通常、受取人固有の財産とみなされ、「みなし相続財産」に含まれません。(算入しない。)ただし、保険金の額、遺産総額に対する割合等から他の相続人と著しく不公平とみられる場合は、極めて例外的に、特別受益に準じて持ち戻しが認められる場合があります。 

 

エ、香典は通常、喪主あてに贈られたものとみなされ、相続財産には含まれません。 

 

② 特別受益額

 

ア、相続人にした遺贈、相続人にした死因贈与、相続人の受けた生前贈与は特別受益として「みなし相続財産額」に算入します。

※ 相続人の受けた生前贈与は損害を加えることの認識の有無も問いません。

 

イ、相続人以外にした包括遺贈、包括受遺者にした死因贈与、包括受遺者の受けた生前贈与は、特別受益として「みなし相続財産額」に算入します。 

 

ウ、 特別受益額は、贈与時の価格ではなく、「相続開始時の価格」に換算して計算します。例えば、贈与時に1000万円相当の土地であっても、相続開始時に時価で500万円相当なら500万円として計算します。ただし、現金の場合は、100万円の贈与は100万円の特別受益として計算します。

 

 特別受益、寄与分が問題となる事案においては、相続開始時を基準として「みなし相続財産」を算出します。(出典:小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 』日本加除出版.76頁)

 

エ、特別受益にあたるものであっても、天災や他人の行為などでなくなったり、壊れたりした場合には、「みなし相続財産額」に算入しません。 

 ただし、もらった者の行為などでなくなったり、壊れたりした場合には、貰ったままの状態で存在するものとして、時価で評価し「みなし相続財産額」に算入します。 

 

民法904条(特別受益者の相続分)

前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

 

オ、相続を放棄した者の受けた「生前贈与」は、特別受益として「みなし相続財産額」に算入することはしません。

 ただし、相続を放棄した者の受けた「遺贈」はみなし相続財産額に算入します。  

 

カ、生前贈与を受けたのち養子になった場合は、その生前贈与は特別受益としてみなし相続財産額に算入します。

 

民法903条(特別受益者の相続分)

1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3.被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

 

4.婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

④ 相続発生時の負債額

 借金、月賦や未払いの税金・家賃・地代・医療費、葬式費用、遺産の管理費用(相続不動産に関するローンの返済金、固定資産税、家屋修繕費、火災保険掛け金)などの「可分できる債務」は、本来遺産分割の対象ではなく、原則的には共同相続人が相続分に応じて負担すべきものですが、実務的には分割の対象たる財産から控除し具体的相続分額の計算をするのが一般的と思います。 

 相続発生時の負債額からは、保証債務、連帯保証債務を除きます。 

 相続税は相続発生時の負債額を控除すべきでないと考えられています。

 

3. 計算の結果、自分の分け前が貰いすぎ(残額がマイナス)になった、あるいは、「みなし相続財産額」がマイナスとなったとき

 

① 自分の分け前が貰いすぎ(残額がマイナス=超過特別受益者)になっても返す必要はありません。

 

② 計算の結果、「みなし相続財産額」がマイナスとなったときは、マイナス分は、超過特別受益者を除く各相続人が、具体的相続分額に応じて負担します。(出典:小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 』日本加除出版.58頁)