□ 被相続人の財産を相続人が引き継ぐことを「相続」といいます。相続は人が亡くなると同時に開始されます。
□ 遺言が無い場合は、法定相続分にしたがって遺産分割します。遺言がある場合は、遺言の指定にしたがって遺産分割します。
□ 「遺産分割の実行の指定」とは、遺言により、どの財産を誰が相続するか指定することです。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 相続の開始
被相続人が死亡したときに持っていた財産を相続人が引き継ぐことを「相続」といいます。
相続は人が亡くなると同時に開始されます。また、裁判所から「失踪宣告」を受けた場合も相続が開始されます(*1)。
相続の開始により、財産上の権利義務はすべて相続人に移転します (ただし、年金の受給権等一身専属的なものは承継しない)
なお、法定相続人同士が同時に死亡したとき(*2)は、互いに相手が存在しなかったものと考え、お互いに相続しません。
*1 》 行方不明の相続人 をご覧ください
*2 民法第32条の2(同時死亡の推定)
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
2. 遺産分割
相続人の協議によって財産を分け、それぞれが相続する財産を確定させることを「遺産分割」といいます。
遺言により、それぞれの財産について誰が相続するかについて指定することを「遺産分割の実行の指定」といいます。
相続財産は、遺産分割が行われるまでは、それぞれの財産について、持分に応じて相続人の共有となります(相続させる遺言がある場合を除く)。
3. 遺産分割協議(相続人の話し合い)が必要な場合
(1) 遺言が無い場合(あっても無効である場合を含む)
遺言が無い場合(あっても無効である場合を含む)は、法定相続分にしたがって遺産分割します。必要な場合は、遺産分割の実行方法について相続人の話し合いで決めます 。
(2) 遺言書がある場合
遺言がある場合は、遺言の指定にしたがって遺産分割しますが、以下の場合は相続人の話し合いが必要となります。
① 遺言で指定された内容とは違う分け方をする
遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺言に従わなくてもよいとされています。相続人全員の合意で、遺言で指定された内容とは違う分け方をするときは遺産分割協議を行います。
ただし、遺言で、遺言で指定した内容と異なる分け方を禁じている場合は、遺言で指定された内容と違う分け方はできません。
② 遺言が「相続分の指定」のみをしている
遺言が「相続分の指定」のみをしている場合は、どの財産を誰が相続するか、遺産分割の実行方法について相続人の話し合いで決めます 。
③ 遺言に「洩れている財産」があり、その扱いに関する遺言がない
遺言に「洩れている財産」は、原則的には法定相続になりますが、相続人全員の同意があれば、その遺産を誰が相続するかを遺産分割協議で決めることができます。
④ 「遺言に洩れている借入金や未払い金などの債務」がある
遺言に洩れている借入金や未払い金などの債務がある場合、原則的には、相続人が法定相続分に応じて承継しますが、相続人全員の同意があれば、その債務を誰が承継するか遺産分割協議で決めることができます。
しかし、対債権者の関係では、債権者の同意がある場合を除き、債務は相続人が法定相続分に応じて承継します。
⑤ 特別受益があり、その扱いに関する遺言がない場合
⑥ 寄与分の申し出があるとき
⑦ 相続放棄・限定承認があるとき
遺産分割協議が成立した段階で遺産の分割が確定し、相続のときに遡って有効になり、共有の期間はなかったことになります。
2. 遺産分割と遺産分割の実行の指定
相続財産は、遺産分割が行われるまでは、それぞれの財産について、持分に応じて相続人の共有となります(相続させる遺言がある場合を除く)。
相続人の協議によって財産を分け、それぞれが相続する財産を確定させることを「遺産分割」といいます。
遺言により、それぞれの財産について誰が相続するかについて指定することを「遺産分割の実行の指定」といいます。