債務(マイナスの財産)の相続

□ 共同相続人同士の内部関係では、債務の相続分は、各共同相続人が、遺産の分配、遺贈、贈与を含めた現実に取得したプラスの相続分に応じて負担します(特別受益、寄与分は無関係とし除きます:多数説)  

□ 具体的に「どの債務をどの相続人がどれだけ引き継ぐか」は、「遺産分割の協議」で決めます。

 

注意事 項 債務の具体的な引き継ぎ方法と弁済方法 

 借金、月賦や未払いの、税金・家賃・地代・医療費、葬式費用、遺産の管理費用(相続不動産に関するローンの返済金、固定資産税、家屋修繕費、火災保険掛け金)などの「可分できる債務」は、本来的には遺産分割の対象ではなく共同相続人が相続分に応じて負担することになりますが、実務的には、分割の対象たる財産から控除してから具体的相続分額の計算をすべきと考えます(保証債務、連帯保証債務を除く。相続税は控除すべきでないと考えられている)

 

□ ただし、対債権者の関係では、相続開始と同時に各相続人が法定相続分に従って直接相続します。債権者は相続人に支払い能力がないと思ったときは他の相続人に法定相続分に応じて請求できます。

 

□ 連帯保証人になっていたときはその地位も引き継ぎ、連帯債務は相続分に応じて分割されたものを承継し、その範囲において連帯債務者となります。(最判S34.6.19) 

 

□ 一回限りの普通の保証もその地位を引き継ぎます。ただし、身元保証、継続的保証(根保証)については、相続は認められないとするのが一般的です。


行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 債務(マイナスの財産)とは

 

 債務(マイナスの財産)には、借金、住宅ローン(*)、月賦、未払いの、税金・家賃・地代・医療費、連帯保証人になっていたときはその地位(保証人の立場)などがあります。

 

* 住宅ローンは通常「団信」に加入しているので、相続人が支払う必要はありません(ただし、団信の加入が任意のものもあるので金融機関に確認が必要です)

 

(相続税等の公租公課、葬儀費用、遺産の管理費用について)

 

 遺産分割の協議に当たっては、遺産についての「公租公課」・「修理費用」、「諸経費等の管理費用」、「葬儀費用」(*)についても、相続人間で合意すれば、遺産に含めて遺産分割を行うことができます。

 

* 葬儀費用の負担者は喪主です。民法上、遺産分割では相続債務にあたりません(税法上は相続債務として控除することができる)

 

 

 2. 債務(マイナスの財産)の相続

 

 相続債務は、具体的相続分とは無関係に、法定相続分に応じて分担するものと解されています。(小池信行(監修)・吉岡誠一(著)( 2015)『これだけは知っておきたい 相続の知識 』日本加除出版.190頁)

 

 借金や保証などの債務は、対債権者の関係では、遺産分割協議を待たずに、相続開始と同時に各相続人が「法定相続分に従って」直接相続し、被相続人の債権者は法定相続分に従って請求することができます。 

 ただし、共同相続人同士の内部関係では、債務の相続分は、各共同相続人が、贈与、遺贈、遺産の分配も含めた、現実に取得したプラスの相続分(特別受益、寄与分は無関係とし除く:多数説)に応じて負担します。 

 

 遺言で「相続分の指定」があると、「債務もその割合で各相続人に承継」されます。 債務だけの相続分をプラスの財産と別に指定することはできません。 

 具体的に「どの債務を相続人の誰がどれだけ引き継ぐか」は、「遺産分割の協議」で決めます。 

 

 債務について法定相続分に従った金額を払った相続人は、現実に取得した相続利益に応じた負担を超える部分については、他の相続人に求償権を行使できます。 

 

 相続人の一人が財産をすべて相続した場合、財産をなにも相続しない相続人が法定相続分の債務の弁済を請求されたときは、財産を全部相続した者に対し遺留分減殺請求を行い、そこから支払うことができます。

  

 財産を全部相続した者が相続した債務を弁済しないと、他の相続人は遺産を全然貰わないのに借金の返済だけを求められることになります。そうならないようにするための方法として、「相続放棄」または「限定承認」があります。

 

 「相続放棄」をしないで債務を相続しない方法として、銀行等債権者が承認した場合に限られますが、債務を引き受ける相続人と銀行等債権者が「免責的債務引受契約」を結ぶ方法があります。

 債務を引き受ける相続人が他の相続人の債務も引き受けることによって他の相続人の債務は免責されます。

 

 

3. 債務(マイナスの財産)の負担者を決める方法

 

 債務の負担者を決める方法として次の二つがあります。

 

① プラスの財産とマイナスの財産を別々に相続する方法

 

 プラスの財産とマイナスの財産(債務)を別々に、それぞれについて各相続人の相続分額を計算します。 

 

② プラスの財産とマイナスの財産を清算し残額を相続する方法

 

 プラスの財産から債務を差し引き、残額について各相続人の相続分額を計算します。

 

 

4. 具体的な債務の引き継ぎ方法と弁済方法

 

① 借金、月賦や未払いの、税金・家賃・地代・医療費、葬式費用遺産の管理費用(相続不動産に関するローンの返済金、固定資産税、家屋修繕費、火災保険掛け金)などの「可分できる債務」は、本来は遺産分割の対象ではなく、共同相続人が相続分に応じて負担することになりますが、実務的には、分割の対象たる財産から控除し(保証債務、連帯保証債務を除く。相続税は控除すべきでないと考えられている)、具体的相続分額の計算をすべきと考えます。

 

② 連帯保証人になっていたときはその地位も引き継ぎ、連帯債務は相続分に応じて分割されたものを承継し、その範囲において連帯債務者となります。(最判S34.6.19)  

 

 一回限りの普通の保証もその地位を引き継ぎます。ただし、身元保証継続的保証(根保証)については、相続は認められないとするのが一般的です。

 

③ 具体的に「どの債務を相続人の誰がどれだけ引き継ぐか」は、「遺産分割の協議」で決めます。

 

 

5. 保証債務の相続

 

 保証債務については、保証の期間や限度額が定められていないものは相続しません。

 

■ 包括根保証(継続的な金融取引や売買取引に関する保証契約)

 保証人の死後、保証は相続しません。ただし、相続時に既に発生していた債務の保証は相続します。

 

■ 身元保証人

 保証人の死後に発生する債務については身元保証責任を負うことはありません。ただし、生前に発生していた保証債務は承継します。

 

■ 賃貸借契約の保証人

 賃貸借契約の保証については相続し保証責任を負います。なお、書面によらない保証は無効です。

 

 

6. 対債権者との関係での、債務の承継

 

 債務は、プラスの財産と異なり、遺産分割の結果によって影響を受ける債権者がいるため、対債権者との関係では、債権者の同意がある場合を除き、債務は「法定相続分に応じて」承継します。

 

 債権者は、遺産分割の協議の結果に従って請求することも、法定相続分に応じて請求することもできます。

 

 同様に、「遺言による相続分の指定の債務」については、可分債務についての負担割合を指定しても、債権者は拘束されません。遺言による相続人に支払い能力がないと思ったときは、他の法定相続人に法定相続分に応じて請求することができます

 

 共同相続人同士の内部関係では相続分に応じた割合となり、余分に払った人は他の相続人に求償権を行使できます。

 

 

7. 財産分離の請求

 

 相続人が多額の借金を抱え、被相続人が遺産をたくさん残している場合、若しくは被相続人が多額の借金を残し、相続人が財産を持っている場合は、

被相続人若しくは相続人の債権者は、自らの債権を守るため、財産分離の請求ができます。

 相続人が多額の借金を抱え、被相続人が遺産をたくさん残している場合は、被相続人の債権者は遺産と相続人の財産(借金)が混合しないようにする必要があり、家庭裁判所に財産分離を請求することができます。請求が認められると、被相続人の債権者は、相続人の債権者に先立って弁済を受けることができます。 

 逆に、被相続人が多額の借金を残し、相続人が財産を持っている場合は、相続人の債権者は、遺産(被相続人の多額の借金)と相続人の財産が混合しないようにする必要があり、家庭裁判所に財産分離を請求することができます。請求が認められると、被相続人の債権者に先立って弁済を受けることができます。

 

ポイ ント 詳しくは 》 財産分離 をご覧ください。